天ツー

象は静かに座っているの天ツーのネタバレレビュー・内容・結末

象は静かに座っている(2018年製作の映画)
4.3

このレビューはネタバレを含みます

「俺の人生はゴミだ 毎日ゴミばかり 掃除してもすぐにゴミがたまる」「特別なことじゃない 皆そうだわ 自分だけだと思った?」 友人の女に手を出してしまったことで友人が自殺してしまうチンピラ そのチンピラの弟を誤って階段から突き落としてしまう男子高生 その男子高生の片想いの相手で教師との関係がバレてしまう女子高生 男子高生と同じの集合住宅に住む老人のその愛犬は他の犬に噛み殺されてしまう 憂いが伝染していく 恨みが原因でまた新しい恨みが生まれていく もしくは自身の不幸を他人のせいにして負の連鎖に落ちていく 非常に陰鬱で出口のない話で室内も屋外も暗く被写界深度が浅いため閉塞感があって息苦しい けれども234分ある割に意外とあっさりしてて見れてしまう 5日間かけて分割で見たからかもしれない スローで長尺なのでエンタメとして消費されるのを断固と拒否してるように感じる

冒頭に不思議なシーン マッチを天井に投げるというシーンがありとてもファンタスティックで好きなんだけどそことラスト以外にそんなシーンがなくて異質で記憶に残る 座っている象とはガネーシャの暗喩でもあるのかもしれない 終盤何か少しだけ好転する雰囲気がしてそれは負の連鎖を止めようとする力が働いているように思える 監督は完成後自死しましたが 不幸が不幸を呼ぶ負の連鎖を象の鳴き声によって断ち切ってくれるのだと そう願って監督は自分の生を断ち切ったのだと自分は受けとりました

コーマック・マッカーシーの「すべての美しい馬」から主題となる引用があります
“彼は世界の美しさには秘密が隠されていると思った。世界の心臓は恐ろしい犠牲を払って脈打っているのであり、世界の苦悩と美は互いに様々な形で平衡を保ちながら関連し合っているのであって、このようなすさまじい欠落のなかでさまざまな生き物の血が究極的には一輪の花の幻想を得るために流されているのかもしれなかった”
つまり世界は負の連鎖のような脈を打っているが美しい幻想のような象の鳴き声が聞こえたそのとき脈は止まったと
天ツー

天ツー