ピポサル

ウエスト・サイド・ストーリーのピポサルのレビュー・感想・評価

5.0
ウエストサイドストーリーは吹奏楽の演奏をきっかけにバーンスタインの音楽から入って普段から聴いていて、3年前にミュージカルも観ていたのでそれはもう期待して観に行ったけどスピルバーグさんがきちんと素晴らしい出来にしてくれていて嬉しかった。開始5分で感謝の気持ちで溢れ、その後も自動的に涙と鼻水が出てくるように。特に好きなMaria〜Tonightはマジで嗚咽しそうになった。タイトルに相応しい、映画史に残るようなマスターピースを作ろうという気概が随所に感じられたし、実際そういう作品になっていると思う。

結局は開発に飲み込まれて白人もプエルトリコ人も関係なく町を去っていかなければならない。静かな劇伴で、それまで豊かだった色彩感もなくなるように終わる虚しい物語。

舞台では不可能だけど映画ではできることって当然たくさんあるわけだけど、特に印象に残るのは言語と撮影と移動。言語はわかりやすく、字幕のおかげで英語とスペイン語を制限なく使えるのでそれにより分断が強調される。撮影は、舞台ではなかなか難しい演者のアップで迫力が伝わってくるし、真上から俯瞰したショットはまるで勢力図のよう。気を衒った撮影はないけど躍動感がめちゃくちゃあって、自分もその舞台にいるような感覚になる。で、移動は特に強烈で、舞台はどうしても距離の制限があるけど映画は自由自在だからとにかく動き回っていたなと。場所がどんどん変わっていくことで映像の豊かさが増すのはもちろん、移動って意思表示だなと思った。どこに向かってどのように歩いていくか、それをどの視点で写すか。その人の意思はもちろん、人間関係も見てとれる。そもそもただ歩いているだけでみんな死ぬほどかっこよかった。当たり前っちゃ当たり前だけど新鮮な発見だった。
編曲や全てのキャストの歌は言うまでもなく最高。エンパワーメントなAmericaはもし今の時代に作られたものともし言われても違和感は全くないし、バレンティーナ演じるリタモレノはなんと90歳とのことで...切ない歌声が忘れられない。でもってエンドロールでコンポーザーがドゥダメルだったことを知りさらにテンションが上がる。この文章を読んだ方はYouTubeでドゥダメルの振っているマンボを見てください。約束です。
ウエストサイドストーリーを知っているか、ミュージカルに耐性があるか、クラシックのリメイクとして観れるか。観る人によってはうーんちょっとな...となる気持ちもわかる。自分にとっては好きという気持ちが溢れる、極上な気分にしてくれる圧倒的名作でした。いやーやっぱり映画って最高っすね......。こんな映画体験なかなかないような気がする。3000円くらいするパンフレット、というより資料集をこれからじっくり読みます。
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