真田ピロシキ

ダンジョンズ&ドラゴンズ/アウトローたちの誇りの真田ピロシキのレビュー・感想・評価

3.9
これだよ。ハリウッドエンタメに求めてるのはこういうの。見るのに予習を求めはせず、オタク的姿勢も必要としない気楽さ。ぶらっと入ってぶらっと帰れる。こういうものこそありがたい。『ヴェノム』や『アンチャーテッド』に近い。最近はファンタジーと言えば重厚壮大なものばかり作られる傾向にあるが、本作は冒頭こそ『ゲーム・オブ・スローンズ』のような雰囲気を纏うもすぐに軽快なノリに。首を斬っても全く血が出ない。しかしこの軽さならそれが正解であるし、見やすさにも繋がっている。RPGの原点と言えるTRPGの大古典原作だけあり、ファンタジーRPGのお約束のような演出がたくさん。これほど潔くやればそれは王道。ドラゴンの妙なファニーさが醸し出すレトロゲーム的趣が面白く、お金をかけてこれをやってるのが遊び心を感じ好きです。

当然物語はそんな高尚なものじゃない。ところどころにコメディを挟みながらゆるく進行する。だが、その笑いに差別的或いは性的なものを用いておらず、また世界の人種構成は特に意識させず自然に多様で「コンプライアンスでやりました」感がしない。これはなかなか凄いこと。巧みなポリティカルコレクトネス。そして裏切り者の敵が廃止されてた闘技場ギャンブルを復活させて搾取しようとする日本維新の会のような新自由主義者。ラスボスは死んでもアンデッドとして酷使し世を支配せんとする、まさに人を人として思わないこの手の連中を最大限に戯画化してる。そいつらを打ち倒すのがアウトロー集団。不本意な流れとは言え悪党から奪い取った富を民衆に分配することで命を救う俠者精神に溢れた奴らで気持ち良く、今の世に煌めく物語。ヒーローとはこういうものなのだ。それに比べて『攻殻機動隊』とか『PSYCHO-PASS』とか『シン仮面ライダー』とか公安なんて権力の手先をヒーローにする日本人の卑屈さが情けなさすぎる。反権力はダサいと言うのが普通の日本人様。西村博之が異世界で論破する生ゴミ漫画を最大の漫画出版社が出すんだぜ。

この映画を見ようと思った最大の理由はミシェル・ロドリゲスがとても目立ってるというから。実際ロドリゲス演じるホルガは初っ端から女と思って舐めて近付いてきたオークみたいな奴の足を無言でへし折って、プロレスラーのようなパワフルなバトルを披露して期待には応えてくれる。しかしその他もホルガと恋愛感情はないが、娘も交えてファミリーとしての強い絆を有する少し頼りない相棒にしてリーダー エドガン(クリス・パイン)が良い味してる。後に仲間に加わるのも変身を駆使して長い1カット?を駆け抜けるドルイドのドリック(ソフィア・リリス)。このキャラは『ホライゾン・ゼロ・ドーン』のアーロイっぽさも少しあってカッコいい。そしてヘッポコ魔法使いから自分に打ち勝って最強の魔法使いになる『ダイの大冒険』のポップのようなサイモン(ジャスティス・スミス)が王道RPG的で最高。比喩や皮肉が通じないセクシーパラディン ゼンク(レゲ・ジャン・ペイジ)も衒いのない正義キャラで冷笑蔓延る今の世に必要とされる。このパーティーを揃えただけで勝ち確。キャラ萌え映画としても素晴らしい。

名作パズルアクションゲームの『PORTAL』がそのまんま取り上げられていたのだけど、これは元ネタがD&Dなのだろうか。今後控えているゲーム映画はお気に入りの『ボーダーランズ』があるが、あれのノリはこれと全く同じなのでこういう映画になってたら思い入れもあって喜ぶ。最近はゲームの映像化が高クオリティなの多くてゲーマーとして嬉しい限り。もっともクソキモオタクに心底嫌気が差して、近頃はPS5を破壊したい衝動と日々戦っているんですけどね。