ふう

キャッツのふうのレビュー・感想・評価

キャッツ(2019年製作の映画)
2.2
「なんてこった!CATSが(映画史的に)殺されちゃった!」
「この人でなし!」

いやあ、聞きしに勝るひどさ。
なんか途中から、これはもしかして公認のパロディ映画なのでは? とか思って笑っちゃいました🤣

という訳で、
「こんなCATSは嫌だ 豪華劇場版」
見てきました。

北米公開後、CGのアップデートをしたと聞きましたが、
トム・フーパーよ。違う、そうじゃないんだ。
2000年代ポリゴンでも私はよかったんだ。
問題は、もっと根深いところにあるんだ。

【ロイドウェバーはここがすごい】

ロイドウェバー版の素晴らしいところは、
「T.S.エリオットの詩をできるだけ何も足さず何も引かず、そのまま歌にし、台詞のない猫たちだけのミュージカルに仕立てた」ところにあると思うのです。
原作『キャッツ-ポッサムおじさんの猫とつき合う方法』は、短い詩の連作なので、大きなストーリーというものはほぼありません。擬人化、といってもいいような手法で、猫の生活を
「もしかしたら猫は夜こんなことをしてるかもよ」
「実は本当はこんなことを考えているのかも」
みたいな空想を膨らませながら描いた不思議で素敵な面白い子ども向けの作品。
その詩に曲をつけてそのままミュージカルナンバーにしちゃった!的なのがロイドウェバー版だと思っています。
だから、なんかちょっとよくわからない表現は多いし、「ジェリクルって何?」「天上の世界って何?」「ていうかここはどこでこいつら何してんの?」みたいなことはほとんど答えてくれません。
私たちは「ジェリクルナイトという猫にとって特別らしい夜を、こっそり覗かせてもらっている」だけなのです。

"天上に行けるのは誰か"というストーリーもミュージカルとして全体を整えるためのものでしかなく、まあご都合的である。
でも、なぜか最高に楽しい。
それは、素晴らしい曲とダンスと、
舞台転換せず、"ゴミ捨て場"という場所から生まれるアイディアだけで様々な場面を表現した楽しい演出にあると思うのです。



【ふうの(ФωФ)モヤモヤポイント】

🤔"ジェリクルナイト"は歌や躍りを競うものなのか?
今回映画版はこの夜を「天上に行くために歌や躍りを競い合う」ものだとしています。台詞があるため説明できるのですね。しなくていいのに。
けど、ん?
"ジェリクルナイト"って歌や躍りを競うものなの?
私のイメージでは、
「自分がいかに素敵な猫かをプレゼンして、天上にふさわしい存在であることをアピール!宴の夜だし踊り出したくなるよね♪」
的なものだと思っていました。
歌やダンスは『レ・ミゼラブル』や『シェルブールの雨傘』的表現だと。
しかし、映画では猫が自分たちが「歌って踊っている」ことを認識している、という演出になっています。しかもそれの良し悪しが"天上"の条件だと。
んん??
それだとグリザベラは「歌が上手いからオーディションに受かった人」みたいになっちゃうし
ミストフェリーズが魔法を使おうと頑張っているところは「歌ってないで早く助けろや」となってしまいます。自覚的なのですから。

私は"天上"はほぼ"天国"に近いものだと想像しており、立派に生きてきた猫たちがそれを讃えられ新しいステージへ行く、そんなものだと思っています。
歌と踊りを競うところじゃないでしょ‼️と序盤からがっかりです🙅


🤔えっと…ジェリクルって気品あるものでは…?
特に前半。ジェニエニドッツとバストファージョーンズ。
彼らは中年猫代表ですが、なんというか…描かれ方が下品。
CATSは猫の世界を覗き見ると同時に人間に対する風刺的なところもたくさんあって、この2匹は特に「いるよねー!」感が強いです。なんというか、こういう人に飼われてるのかなあ、みたいな。
暖かい暖炉の前でふかふかの高級クッションにくるまってそうな彼ら。彼らなら、もっとお行儀よく食事をしそうですし、ある程度礼儀正しい方々だと思うのです。
百歩譲ってジェニエニドッツはぐーたら猫ですからいいですけど、バストファージョーンズは。高級クラブの会員でタキシード着て現れたのですよ!あんな卑しく残飯漁る…かなあ??
いっぱい食べる子だけど、決していやしんぼじゃない、むしろグルメ気取りだと思うんですが…
総じて「私たちはジェリクルだから」というようなある意味特権階級的な誇りを感じる猫ちゃんが少ないのは残念でした。


🤔マキャビティの描かれ方
これがねー…問題だと思うんだけどなあ…
魔法が使えるチンピラ!
グリザベラが闇落ちしたのもマキャビティのせい!
うーーーーん…
いや、グリザベラが救われるのって、
「人生の華やかな時は過ぎて、今は辛く惨めな生活をしているが、過去を見つめながらも決して挫けずに前に歩いていく」
その姿を滑稽だと思いますか?尊いものだと思いますか?
っていうところだと思うのです。
チンピラマジシャン・マキャビティの誘惑に負け、ってなると、うーんなんというか、違う気がするんですよね…

そもそもマキャビティって、天上どうこうに関わらない"厄災"のようなものだと思うのですよね。
誰なのか、何が目的なのか、何一つわからないけど、この世における恐ろしい出来事一切合切の裏には奴がいる、みたいな。
むしろ天上と逆の"死"の象徴のような。
だから、舞台版では、マキャビティと戦って勝利!長老猫奪還してハッピーエンド!としないのかなあ、と。
本当の"災い"から救うのに必要だったのは強大な力でも賢い頭でもなく、小さな奇跡・ミストフェリーズだったのではないのでしょうか。
それを…それを…おのれ…


【監督にひつようだったもの】

監督には、ぜひ
ディズニー『おしゃれキャット』
大島弓子『綿の国星』
岩合光昭『世界ネコ歩き』
を履修していただき、猫の魅力とは何か、猫を擬人化するにはどうすればいいか、を学んでいただきたいと思います♪

【私たちに今ひつようなもの】
ロンドンキャスト版CATSのDVD・Blu-rayがAmazonで売られています。
日本語訳が詩的で若干取っつきにくいかもしれませんが、ぜひ一度見てみてくださいませ! https://www.amazon.co.jp/dp/B006QJS95W/ref=cm_sw_r_cp_apa_i_AlRlEb8N1X68D


ここまで長ーーい愚痴を聞いてくださってありがとうございました!カルト映画として見れば、わりと楽しかったです😊
そして禁断の事前レビューにコメント下さった方もありがとうございます!消しちゃってごめんなさい💦全部ありがたく読みました♥️♥️

あ、ネタバレコメントに【ふうがかんがえたさいきょうのえいが・きゃっつ】をのせますのでもしよければー
ふう

ふう