朝倉

きみと、波にのれたらの朝倉のレビュー・感想・評価

きみと、波にのれたら(2019年製作の映画)
3.8

ただのキラキらぶドッキュン映画じゃないんです!!!!!!!!!

もう声帯が擦り切れるほどに声を大にして言いたいですね。

確かにキラキラしていることは否めないです。「きみと、波にのれたら あらすじ」検索結果で、ほら青春らぶドッキュンやん〜とぼやいた方、ちょっとお時間をください。ここで、観る手を止めてしまえば、本作の言葉をお借りするなら"水の中にずっといても波には乗れない"ですよ!固定観念の中を泳いでいても、新たな価値観は生まれてこないです!
苦手意識のある方に観ていただくために、朝倉頑張ります。最後まで読んでいただいて、再生ボタンにまで繋がる事を祈って朝倉頑張ります。

幼い頃からサーフボードが相棒のひな子。彼女が運命に手繰り寄せられて出会う、消防士の港。2人の出会いから別れ、再会、そして心の繋がりまでを描いています。
脚本を書かれた吉田玲子さんによると、「幸せの中にも何か不安とか迷いがある女の子が、一度自分と向き合って再生するお話」と、realsoundのインタビューで語られています。ここで言う、”幸せ”は劇中では冒頭部分のみです。キラキラ青春映画と言われていますが、その要素は一部分であり、冒頭にしか登場してきません。ここからわかるように、本作はそのようなキラキラの部分には重きを置いていないのです。伝えたいのはそこではなく、その後の部分、ひな子がどのようにして不安と迷いと向き合い生きていくのか、ここが本作の重点となります。
たくさんの思い出を作り、愛を育み、もっともっと2人だけの幸せを感じていこうと誓った最中、引き離されることとなったひな子と港。
自らの意思に、後悔に見ぬふりをして、ひとり生きるひな子を支えようと死んでもなお姿を現す港。愛する者が亡くなり、残された自分の未来を見ることができない中、突如幽霊として現れた港とともに、過去の時間に生きるひな子。そんなひな子を、なんとか今の時間に引き込もうと背中を押す周囲の仲間。
最悪の状態にありながらも、仲間たちがいて、肉体はなくとも姿は存在する恋人が目の前にいて。わずかながらも、自分を照らしてくれている光を頼りに、なんとか生きるひな子の姿に、見る者はつかの間の安心感を覚えるかと思います。ですが、その光は自分自身を照らしているだけで、決して足元とその先の道は照らしてはくれません。ひな子が、観客がそのことに気づいた時、本当の絶望へとぶち当たります。それと同時に、追い打ちをかけるように、自分のヒーローだとひな子を愛する港の、その思いと過去を知ることにもなります。その真実を知った時、ひな子の止まった時間が再び動き出します。彼女の強い力によって、歩き始めるその姿は、どの人の目にも輝いて見えるはずです。実は心の奥底にある、自ら止めている出来事やトラウマの足元に、光を当ててみようかと思わせてくれるはずです。

本作に出会うとともに、スピードを上げて突き進むひな子と、底なしの優しさと愛を持った港と出会うことができたことは、私のかけがえのない思い出となりました。作品の重大なキーパーソンとなる、主題歌のGENERATIONS「Brand New Story」を聴くたびに、2人の姿を思い出しては、私ももう少しふんばってみようと心が強くなります。

「きみと、波に乗れたら」は、
今を生きようと頑張る者に 過去の出来事に縛られて苦しむ者に 信じる力の偉大さを知りたい者に 心の支えとなるお守りが欲しい者に
力をあたえてくれる作品です。
朝倉

朝倉