Yui

私、オルガ・ヘプナロヴァーのYuiのレビュー・感想・評価

3.8
チェコスロバキア最後の女性死刑囚として、23歳で絞首刑に処された実在の人物を描いた作品。

彼女がどういう人間なのかは関係なくて、彼女自身に寄り添ってくれる人が一人でもいれば良かったし、彼女自身に寄り添えるかどうかなんだろうなぁと感じた。

彼女自身の生い立ちや境遇やしてしまった事は、正直ありふれた出来事だなと思った。
家庭環境が良くない、いじめ、孤立、自殺願望、自己哲学、苛立ち、喪失感、孤独、自殺願望、悪循環、無差別殺人。

周りに良くある訳じゃないけど、日本のニュースでも良く聞く話。

ただ、殺人や事件がニュースになっているだけでその手前の人達がどれだけいるだろうか。

愛されず、いじめられて、どこに行っても孤立したら、殻に閉じこもるだろうし、自分や誰かの命を奪う事にもなるだろう。

子供ならまだしも、成人なら自分の努力も必要とか、いじめられる方にも原因がとか言うけど、その考えを一人一人が改めないと、今後もオルガのような人や事件を起こす人はいなくならないんだろうな…。
秋葉原の事件とかが頭を過ぎった。

それにしても、そこまで深くは描かれていなかったけど、少ないシーンだけでオルガの家族の嫌な感じは十分伝わった。ラストシーンだけでも心臓が冷えたけど、オルガに共感は出来なかったな。

でも、それで良いんだと思う。
オルガに偏らないような作りになっていたと思うし、それが凄く良かった。オルガに同情するだけじゃなくフラットに観られる作りに好感が持てた。

ただ、めちゃくちゃ眠くなってしまったー。
冒頭もなんか話入ってこないし、途中途中何度か寝てしまった。
ラストまで観た上で冒頭に戻ったらめちゃくちゃ話入ってくるし、前のめりで観れたのに。そう考えるとなんか色合いとかテンポとか構成が惜しいのかな。

内容的にも分かりにくい部分がちょいちょいあったのも残念。最後の死刑囚も調べないと分からないし「いじめられっ子」と訳されていたのも「ヨーロッパの貴族制度で身分の高いものが罪を犯した際に身代わりを引き渡す制度のこと」らしい。
オルガは『私はみんなの身代わりとして罰を受けます』という強い意味で使ったんだね…。

チェコの社会情勢なんかももっと良く知っていれば理解が深まったかもしれないけど、社会の生贄に選ばれたとオルガは感じていたのかな。

彼女がもっと温かい家庭で、愛や温もりを感じていたら結末は全然違ったよね。

この前観た『プリズン・サークル』でも強く感じたけど、幼少期の環境って大事。親じゃなくても、愛を与えてくれる身近な大人は本当に大事。

その愛の経験が、いざと言う時に自分を守ってくれるんだと思う。

愛がもっと簡単に手に入って、目に見えるものだったら良かったのに。

2024-028
Yui

Yui