カタパルトスープレックス

ビーチ・バム まじめに不真面目のカタパルトスープレックスのレビュー・感想・評価

3.5
ハーモニー・コリン監督は19歳の時に『KIDS/キッズ』の脚本を書いてから一貫して「ファックド・アップ(どうしようもない奴ら)」の立場で映画を作ります。今回はフロリダに住む詩人ムーンドッグ(マシュー・マコノヒー)の話。

詩人と言っても「ファックド・アップ」なクズです。昔はそれなりに名の知れた詩人で、地元では有名人。奥さんのミニー(アイラ・フィッシャー)は超金持ち。でも、ムーンドッグは詩も書かず、ヒモみたいな生活です。それでもオッケー。なぜなら、このミニーもかなりの「ファックド・アップ」なパリピだからです。しかし、事故でお金持ちのミニーが死んでしまいました。死ぬ前にミニーは次の詩集を出さない限りムーンドッグには遺産を譲らないと遺書を残します。ローカルセレブからホームレス(Bum)に転落するムーンドッグ。さあ、どうしよう。これが大筋です。

ハーモニー・コリン監督作品全てに言えることなのですが、観る人を選びます。ムーンドッグは筋金入りの「ファックド・アップ」なんですが、天才です。バロウズやギンズバーグ並みの天才なんです。娘も結婚したばかりの夫に「パパはすばらしいの。あなたは違う。あなたはすばらしくない。でも、頼れるわ」と言います。これを認められるかどうか。それがこの映画を好きになれるかどうかの分かれ目ですね。

それにしても本作におけるマシュー・マコノヒーの演技は素晴らしいです。怪演と言ってもいいです。この演技のためだけにこの映画を一度は観てもいいかも。