泣く子も黙る平和のアイドル

キラーズ・オブ・ザ・フラワームーンの泣く子も黙る平和のアイドルのレビュー・感想・評価

4.0
冒頭のインディアンの儀式から油田が吹き出し、狂乱に溺れていく様子のシークェンスが素晴らしすぎた。
その時に流れてる音楽と合わさり、200分楽しめそうだと確信した。

物語として、油田を発掘したインディアンの部族とその資産を狙う白人たちが主軸。
そこから分かる通り、目を覆いたいような汚いことが巻き起こっていく。

確実にただものではないと思っていたが、デニーロ演じるキングが恐ろし過ぎる。
あの笑顔と眉を顰めた表情、そしてすっと心に入り込んでいく掌握術が本当に怖かった。

スコセッシの暴力描写はやや控えめ。全体としてどんよりした雰囲気と常に緊張感のまま物語は進み、FBIの登場でまた展開していく。

中盤で姉妹の母が天に召され、先祖とただの広い草原で邂逅するシーンは鳥肌が立った。
周りみんな、先祖、土地、家族を蔑ろにして私服を凝らしていく中であの母親は真に純粋だったのか。
全体的にとても色濃く死の匂いが漂う作品だったし、その中でも人の命がとても軽く描かれているのが印象的だった。

観終わってから立ち上がれないくらい感動したのは久しぶりだった。全てにパワーがあった。
最後の太鼓とダンスのシーンを見ながらなぜか泣いてしまった。
上から引きで取ったラストショットは冒頭で語られた丘に咲くフラワームーンのようだった