なっちゃん

キラーズ・オブ・ザ・フラワームーンのなっちゃんのレビュー・感想・評価

3.7
久々に映画みたなあ…という感覚になれた。3時間半さすがに長かったけども。
ハリウッドがストライキやってる中で公開してくれたスコセッシに感謝。
もうおじいちゃんやのに広告のためにいろんなインタビューも受けてくれて感謝。

父親不在で育った主人公が父権的存在にのみこまれ、そのシステムの歯車となっていく。
ゆっくりとしたストーリーのテンポが、その逃れられなさと息苦しさを強調する。

ディカプリオ史上トップレベルに自我がなくダサい主人公。
ウルフオブウォールストリートの役もひどい役だなと思ってたけど、大きい欲望があって、ある種気持ちよかった。あほやな〜!(笑)と笑える明るさがあった。
一方、こんなただただ長いものに巻かれるダサい役はじめてじゃない?
とにかくすべての言動が小物すぎる。なんか歯並びわるなったか?と思ったら役作りだったようす。たしかに。歯で小物感演出できるんや。

ディカプリオは先住民の妻を愛している。が、「お前の妻はいずれ死ぬ!!!!」というキングの超暴力論に呑まれて妻に毒を盛る。
おかしいと思いつつ抜け出せない蒸し暑い空気の中で、レオナルドディカプリオが自分も毒を飲むシーンの緊迫感…さすが。感情のグラデーション美しかった。
最後の「私に何を飲ませてたの?」に「インスリンだよ」と答えたのは、自分を守るための答えでしかない。そら愛想つかされます。それを毒だと認めたら心壊れちゃうもんな。でもそれって、自分を優先したってことやんな。
キングへの義理も果たしきれなかった上に、妻を傷つけた。事実を受け止めなければならない。それができない。
自分のための嘘でしかないから最後の最後までダサかった。

ダサいでいえば拘置所の叔父と主人公の会話も鬼ダサかった。旧時代的家父長制ルールが、新しく現れた"法律"というルールにねじ伏せられ、裁かれるようすも皮肉がきいていて面白かった。
結局FBIも良心に従った捜査というより権力拡大施策の一環だったというメッセージも忘れない。
ここがスコセッシの描く「正義」のあいまいさよな。

スコセッシの「正義」のあいまいさと「暴力」の確かさ、ここにしかない味がする〜〜
幼少期リトルイタリーでのバックグラウンドからくるんだろうか。かの名言 "the most personal [filmmaking] is the most creative"を体現してるな。

よかった~
なっちゃん

なっちゃん