雷電五郎

ベルベット・バズソー: 血塗られたギャラリー​の雷電五郎のネタバレレビュー・内容・結末

3.3

このレビューはネタバレを含みます

画廊に勤めるジョセフィーナはある日同じアパートに住む老人が倒れている場面に出くわす。彼の部屋には猫とおびただしい数の絵が残されていた。

ホラー要素は強いですが、えぐりこむように現代のアート(というよりアートを食い物にする職業)に対する皮肉をボディにブローしてくる映画でした。

個人的に絵が元で死んでゆく設定が好みだったのでディーズがどのような情念の元であの絵を描いたのか明かしてほしくはありましたが、絵が生み出された経緯にスポットをしぼるとホラーテイストが強くなりすぎるのでバランスをとったのかなと。

アートを自らの利益のために食い物にする人間がアートによって死に導れる一方で、ディーズの絵を見て自らの創作に対する姿勢を改める画家達の姿も印象的でした。

作品の中で、際限なく生み出し続ける才能は存在しない。自分を信じて不安と過去を乗り越える。というような言葉が出てきますが、ダムリッシュとピアースはその原点に帰った印象を受けました。

欲望のためにアートを「商品」として扱うロドラ達とは対照的に、自らの一部として損得抜きにアートを生み出し続けるピアース達にはディーズの絵が恐れでも呪いでもなく自己を見つめ直すきっかけになっているのも、皮肉めいています。

浅学ゆえ、アートのことはさっぱり分かりませんが有名であること価値があること以前に、自分が好きだと思った作品を愛することが芸術に対する真摯な姿勢なのかもしれません。

最後のモーフの死に方はもう少し凝った演出が欲しかったとも思いますが、恋人に良い顔をするためにこき下ろしたリッキーの作品に殺されるのも自業自得なのでしょう。

皮肉に満ちた不気味な雰囲気の中で創作に真摯に向き合おうとする人間だけが爽やかに見えますね。
面白い映画でした。
雷電五郎

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