JunichiOoya

盆唄のJunichiOoyaのレビュー・感想・評価

盆唄(2018年製作の映画)
2.5
帰還困難区域とされた福島双葉町で盆踊りを再び、と想うひとたちに寄り添ったドキュメンタリー。
明治期、福島からハワイに移住し根をおろしBON DANCEを踊り継ぐ人たち、江戸後期の飢饉で越後から福島に移り富山の盆踊りを受け継いだ、ハワイ以前の人たち、双葉に住むことを許されず散り散りに「避難」を強いられる人たち。
世代縦断的に寄る辺なさを抱えながら「盆唄」をアイデンティティに「血」を繋げる、というような話。
作家は被写体と穏やかな関係を結びながら撮影を続けるけれど、視点が単一で、見る者に訴える力は随分と弱い。とりわけ富山から福島への移住のくだりはアニメーションで、取材の経緯も含めて、曖昧さは否めない。
「31代目です」と仰る登場人物もあり、長年の苦労と辛抱、成功、そして現在の理不尽には当然心動かされるが、根っからのノマドたる私には少し別の世界かも。
メインキャラの太鼓叩きの電気屋さんは楽器屋かと見紛うばかりのギターコレクションをお持ちで。
作家は、もう少し多様な階層の双葉の人たちを取材しても良かったのかも。
クライマックスたるべき櫓踊りの人出の寂しさが、映画冒頭のハワイのそれの賑わいと余りに対照的だったのはそのあたりかしら。
エンドロールの暗がりにライトアップされた主要メンバーの盆唄、その孤立具合がなんとも物悲しかった。
因みに席数60、平日19時20分の回、客は二人でした。
JunichiOoya

JunichiOoya