織田

お嬢ちゃんの織田のレビュー・感想・評価

お嬢ちゃん(2018年製作の映画)
3.5
みのりは可愛い、顔が良い──と他者から自動的に認定され、自分の置き位置を定められる見方を当たり前のようにされる主人公の話。常に評価目線にさらされているのが印象的で、彼女の周囲は無自覚な搾取や判定を繰り返していく。「可愛い」とポジティブに評価していれば良いでしょう、という感じで、みのりを利用したり「可愛いカフェ店員」として見たりしていく。

こういう見方は私自身もしてきたし(されることも恐らくあったし)、友人の「顔が良い」という部分を大事にして、自分に見返りがくるようにその人と付き合っていたこともある。映画内で「美人と不細工は生涯獲得金額が3000万違う」とか「コンパに美人を連れてこいと言われてる」とか言われていたけど、顔の良い人と関わると損得勘定が働くことがあるという話。

世の常といえばそうなんだと思う。でも一方でそれは確かに搾取だよねというのを『お嬢ちゃん』では問われている気がした。もし20代前後の頃の自分がこの映画に登場人物として出ていたら、みのりへの無自覚な評価を繰り返していたんだと思う。だから、彼女が見せる突き放すような目線には「お前もそうでしょ」と見透かされているようで痛かった。

あと多分これは夏の湘南(鎌倉)って部分が大きいんだとは思うんですが、異性との出会いにこだわる登場人物ばかりなのが印象に残った。確かに自分の周りも私自身もそういう時期があったし、出会いが自分の中で重要な人ってやっぱり多いのかなと感じる。みのりの知人に限らず、冒頭の海で待ち合わせをする女子の間でもそう。異性を対象にした武器とかそういうテーマでの話が出てくる。

ただ上記のテーマにはなるほどなと納得した一方で、あまり乗り切れなかったのは人々の会話シーンがお芝居っぽく感じたから。言ってる内容は節々で興味深いんだけど会話の転がし方が不自然。どうも説教くさく感じた。何だろう、昼のシーンが多かったからかな?ああいう恋愛観とか人生観みたいなのって明るいうちから話すイメージがあんまりなかったから違和感が。

みのりもみのりで愛想という概念が希薄な感じがしたけれど、全体的に無自覚な加害性を痛感させられる作品だった。ちなみにみのりの煙草の吸い方が癖強くて印象的。
織田

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