織田

夜明けのすべての織田のネタバレレビュー・内容・結末

夜明けのすべて(2024年製作の映画)
4.7

このレビューはネタバレを含みます

人は互助ができると教えてくれるような人間讃歌の映画だった。

原作も読了。各所でいわれている通り、脚色が成功している映画だと思った。当然小説では登場人物の感情描写があるので映画はそこがフラットに見える一方、小説では少し影の薄い人たちの温かさが映画だとより強く印象づけられていた。社長や辻本の見え方は結構変化している。

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いい人しか出てこないと言ってしまえば簡単なんだけど、同僚、元同僚、恋人、友人と様々な立場が出てくる。ゆえに自分もどこかの場所で、"誰かにとってのあの人たち"のような存在になれるのかもしれないと錯覚した。特に栗田科学は社員たちにとって本当に温かく、心地よい居場所。人物たちの家庭がほぼ描かれない中で栗田科学は家としての側面も持っていた。会社という場所に行くのが億劫だと思う社員はあそこにはいないはず。そんな職場だからこそ、お節介にも見える藤沢も厚意としてみえてくる。

生きていれば苦しみを覚えることもあるだろう。傷を負うこともあるだろう。でもそんなときにそれに呆れたり追い討ちをかけたりする人ばかりではなく、人というのはもっと信頼していい存在なのではないかと思わされた。

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なぜいい人なのか、優しいのかと考えると、人に対していい意味で期待をしていないんだと思う。見返りを期待していないんだと思う。飯の誘いを断られても、俺はこんなとこで燻っている人間じゃない感を出されても、そこに対して落胆をしない。私個人はがっかりされたり嗤われたりするのが怖い人間で、自分のとった態度を後悔してはその度に「周りはそんなこと思ってないよ」「気にしなくていいよ」と言われることがよくあるのだけど、この映画を見ると案外実際もそうなのかもしれない。

2月は上旬に『朝がくるとむなしくなる』を観て、下旬に『夜明けのすべて』を観た。
少し前だったら「いい人たちばっかりの優しい世界の映画だね」くらいに思っていたかもしれない。でも正直ここ最近は精神的に不安定になっていて、まだまだこれから人生が続いていくのかとか色んなことに疲れていた中で、敵意だったり不満だったり嘲りだったり足の引っ張り合いだったりが無いこの2作品は、人生そんな悪いものじゃないよねと思わせてくれるものだった。

『朝がくるとむなしくなる』でも同じことを書きましたが今の自分が必要としていた映画でした。
織田

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