せんきち

惡の華のせんきちのレビュー・感想・評価

惡の華(2019年製作の映画)
3.8

押見修造の原作マンガは未読だが面白い。


鬱屈した青春もの。本編で何度も「変態」という言葉が出てくるが大した変態ではない。確かに玉城ティナと伊藤健太郎はSM的主従関係になるけど、変態性は感じない。2人の間で連呼される「変態」「クソムシ」は自分の不安と不満が何なのか言語化できない玉城ティナと伊藤健太郎の心の叫びなのだろう。


「ムカつく」「キモい」を連呼する子いるじゃないですか、あんな感じです。



必死で背伸びしたカッコつけの象徴がボードレールの『惡の華』という痛々しさ。自分は他のバカと違うが何がどう違うのか自分にも分からない人の苦しみに満ちた作品。


井口昇監督作では最も良く出来てると思う。つか井口昇はまだ鬱屈したとした青春をこんな風に描写出来るんだから凄い。普通、もう少し大人に描きますよ。



凄かったのは玉城ティナの暴力的な美しさ。エキセントリックな悪魔的なヒロイン仲村さんを怪演。玉城ティナはここまで美人だと普通の役出来ないよね。ありふれた学生なんてありえない。全盛期の緑魔子かと思った。増村保造の『盲獣』リメイク出来るよ。


クライマックスの祭りのシーンはカルト映画『小さな悪の華』のオマージュ。それをあんな風に決着させたのは彼らの未熟さ半端もの感を象徴してて非常にいい。


EDクレジットの役者の大ラスが飯豊まりえなのが笑った。君いつから大物役者になったのかと。
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