たいてぃー

惡の華のたいてぃーのレビュー・感想・評価

惡の華(2019年製作の映画)
3.8
原作の漫画、ボートレールの詩集は未読。後で知ったが、原作者は押見修造。昨年の「志乃ちゃんは自分の名前が言えない」も押見修造原作で、小生の昨年の日本映画ベスト、2位にした秀作。そして「スイートプールサイド」も同じ原作者。この3作が同じ原作者って聞くと、納得する。思春期の危うい感情を特異に描いてるのが共通してる。監督は、井口昇。原作者のオファーとのこと。これも納得。
初めの中学生の頃のシーンでのブルマ姿が新鮮。最近はブルマじゃなくて短パンのはずだが、失くなった頃に合わせて監督が時代設定してるとのこと。こんなとこも監督のこだわりを感じる。このシーンがブルマ・体操服を盗むシーンへと繋がる。
「クソムシ」を連発した玉城ティナ演じる仲村の家を、伊藤健太郎演じる春日が訪ねる。そこへ現れた父親が春日を招き入れ、ビールを飲む。普段、娘を訪れる友人がいなくて喜んだのだろう。この父親を演じるのは高橋和也。渋いね。
春日の両親役に、坂井真紀と鶴見慎吾。「ノン子36歳」でも共演してたよね。息子への接し方が切ない。その他、佐々木すみ江、黒沢あすかも、いい。ベテラン俳優たちがストーリーに上手く噛み合っている。
前半の体操服を着させてのデートや深夜の教室内での墨汁によるぶちまけ、河原のほったて小屋でのエロさとかは、マゾヒスティックでヒリヒリさせられたが、雨中の峠での絶叫や祭りでのシーン、そしてラスト近くの海辺での戯れなどは、思春期の熱さや爽やかを感じた。こんな取り合えせも上手い。
本作はマニアックな映画で間違いなく、大手シネコンで配給してるのも驚くが、その製作意欲は買いたい。若手俳優たちの頑張りも嬉しい。特に佐伯奈々子役の秋田汐梨。難役で難点もあったような気がしたけど、初々しい演技に好感を持った。今後に期待する。