Aya

ザ・ピーナッツバター・ファルコンのAyaのレビュー・感想・評価

3.9
#twcn

優しさは伝染する。
擬似家族版「ネブラスカ」。
しかもブルース・ダーン出てるしね!

アカデミー賞受賞式のジェントルマンな態度も記憶に新しい本作。
本作も配信で1300円の一部がDonateということで鑑賞。

この脚本を苦難がないとか、そんなに世の中うまくいくわけないとか、綺麗事ばかりだとか、いう人はもっと大切な人を信じて、自分の優しさを信じてほしい。

私の中のシャイヤ・ラブーフのイメージ=やんちゃ。演技力はあるが、それにかける重いと行動が度をこしてるというか常軌を逸しているというか・・・。
なのにプライベートでは共演女優に手を出しまくり(しかもちゃんと付き合ってるw22歳のまだ駆け出しの頃のミア・ゴスとは結婚までした!)ブイブイ言わせてたり、ガスガス言わされてたり、でもいい映画に出てるから、エージェントが優秀なのかなあ?とか。

おまけに幾度にわたる逮捕歴、映画のためなら自分で顔をナイフで切り裂き、前も後ろも披露し、事故って指を破損、とかもう・・・。
どんな企画だよ!と思ってる「HONEY BOY」楽しみにしてますww

とにかく危険人物やと思ってますw

そんなシャイヤ・ラブーフがなんかミニシアターでかかりそうな90分くらいの尺のミニマムな「良い映画」に出てるとな?!

不良漁師のシャイヤ・ラブーフは、一緒に魚漁をしていた兄を亡くしてからやさぐれがち。
とってきた蟹や魚介を盗んだり、無免許だったり。
同じ港で働くいわゆるレッドネックの上司や同僚たちにいじめられ、疎まれている。
(いや、結構皆さん真っ当な事仰ってるんですけどね・・・)

何かにつけて兄と比べてできない子ちゃんの自分はいじめられ、港では免許の交付数の関係でシャイヤー・ラブーフ演じるタイラーは漁が続けられないと言われ、今までの行いも含めてボコボコにされる。
ケンカが弱い、という説得力がない上、逆に怖い・・・。

劇中にも出てくるけど、みんな生活が苦しいわけですよ。そこをなんとか頑張って生きてるのに「頑張っていないように見える」タイラーの村八分にキレて、ある日籠網に火をつけてボートで逃げてしまう。

するとなんとボートの中でゲロ吐いてるパンツ一丁の青年が。

施設で暮らすダウン症のザック。彼は親に捨てられ、他に身寄りもなく、引き取り手もなく、イレギュラー的に老人保護施設で暮らしていた。
ザックには目標があった。
憧れのプロレスラー、ソルト・ウォーター・レッドネックの主催するプロレス学校に入学してプロレスラーになることだ。

ひょんなことで一緒になったタイラーとザック。
ザックはもちろん終われる身。

時折フラッシュバックする兄との楽しい思い出(兄貴ジョン・バーンサルだよ!)がとても大切だからこそ、漁師は続けたい。
でも今の所では無理だから、フロリダの港で再起を目指す。

しかも火事が思ってた以上に大事になっており、警察からも追われており、歩いて南へ行くことに。
聞いてみると、ザックの目指しているプロレス教室は通り道。
こいつもほっとけない!と一緒に旅をすることに。

もうこの時点でタイラー超良いやつじゃん!
盗みも放火もしてるけど!!

さあ男2人のロードムービー(歩きと途中からいかだ)が始まりましたよ!
俺たちの大好きなやつぅ!
男同士のロードムービーならたとえ犯罪者でもダウン症でも関係ない。
必要なのは相手を頼り、頼られ、信じ、信じられ、協力関係を作ること。

しかし、施設を脱走してきてるから、いろんな人や役所がザックを心配してるんですね。
あんなお門違いな施設にザックを入れてるくらいだから、その辺はお役所仕事のクソ所長がきちんと通報をせず、施設の担当ボランティア、ダコたんに自力で探せ、と命ずる。
ダコたんは大好きなザックが心配だから探し回るが、手がかりなし。

あのー、タイラー。
初めて商店でダコたんを見た時から一気にザックのことなんて忘れただろ?!
そんな汗臭そうな汚い格好に髭面でよくこんなバリバリええとこ育ちっぽいダコたんをナンパできたなおい!!

もうこれこそ中の人と役がごっちゃだよ!
プレイボーイが!
しっかり中指を立てて去るダコたんのエレノアって名前も可愛いし、彼女は働かなくていいのは家が裕福で、且つ・・・その背景を全くさとらせないが、強い女性だ。

タイラーはザックの夢を応援する。
なんの打算もなく。
タイラーがザックを助けた時にタイラーもザックを助けた時に彼がプロレスラーになりたい!という夢が現実的であることに一瞬で気付く。

そこからはもう・・・付き合っちゃえよ!
相手のことを信じて、必要なもの、ザックには食糧や服、そしてトレーニングと水泳。
タイラーには過去に囚われず前を向くこと、そして友達をお互いに与え合う。

わかってるさ。
友情は与え与えられる関係ではない。
何が得か損か、そんな問題じゃない。
もう早い段階でお互いが好きだし、お互いが今までこんなに心を許せる「友達」は初めてだったんだと思う。

ザックのショットガンの腕にもびっくりだし、ジャスパーとかいう目の見えない信心深いおっさん、ガチで撃ってきてビックリしたw
ここでもタイラーのチキンっぷりをフル発揮。
変な人だけど良い人だった・・・神はあんただよ・・・。

そこで2人で作ったお手製のいかだ。
さすがDIYはお任せ!なタイラー。
2人は陸から川へ進路を変更する。

この時のザックのセリフがもう(T_T)
誕生日パーティーはザックにとって特別で招待するゲストも特別。
だから、その大切なものを君に。

そして!!ピーナツバター・ファルコンの誕生!!
ここでも男泣き!!
もうここまできたらハンドシェイクじゃなくて絶対知の契りまで交わしてるはず。

2人で楽しく旅をしていたのに、ダコたんに追いつかれたー!!
ダコたんは施設の人だから常識的で今までの経験から正しい道を説くんだけど、今はもうダコたんの知ってるザックじゃない。
ピーナツバター・ファルコンだから!
そんな彼も夢のためにダコたんを巻き込む。
だってダコたんも好きだもん。

息継ぎ練習の優しさと使い方の巧さにも(T_T)
しっかし、このいかだすげえちゃんとしてるいかだだな・・・大きな川に出ても丈夫だぞ?
そしてダコたんも旅に順応し、一緒に楽しく時を過ごす。
(ダコたん的には連れて帰るまで、、、と葛藤があっただろうな)

そして、奴らに追いつかれ、いかだを焼かれてしまうが、またザックがタイラーを助けてくれた。

この2人はお互いがあくまで対等だ。
Buddyだ。

そしてついに・・・ソルト・ウォーター・レッドネックのところにたどり着くが、、、当たり前に教室は10年前にしまっており、彼は隠居生活(だって見てたのVHSだもんしょうがないよ。

ここでもタイラーはザックの希望を奪わないように気を利かせるが、なんとソルト・ウォーター・レッドネック(よく考えたら凄い名前やなw)がプロレスラー時代を取り戻し、ザックに個人指導と試合まで用意してくれる。

優しさの連鎖・・・。
だって、誰も損得で動いてないんだよ!!

ちなみに演じるトーマス・ヘイデン・チャーチさんは「EASY A」のエマ・ストーンがお気に入りの先生の人で「Daddy's Home」のイかれた社長の人。

試合はその名の通り、レッドネックたちの集う裏庭で開催されているものの、リングも本格的だし、レフェリーもちゃんといる。
ソルト・ウォーター・レッドネックはちゃんと賄賂も渡して(ちゃんとってw)ザックの夢を叶えてあげるんだけど、対戦相手のおっさんが大人気なくて・・・それでも・・・。

ザックはね!!
本物なんだよ!!
ピーナツバター・ファルコンなんだよ!!

ピーナツバター・ファルコンは今までどれだけ頑張ってトレーニングして、素晴らしい友達ができて、旅を経て大人になって、しかも実力があって。
それを最大限発揮するために、よくわかんないんですけど、こんな本格的なのにセコンドいなくてwタイラーが励ますだけなんですけどwそのタイラーが!!!

もう一度

「僕の誕生日を君にあげる」

ザックの誕生日今日かよ!!

「友達は自分で選ぶ家族だ」

家族だー!!!

とんでもなく胸にぐっとくる、とても自然で、大切な家族の話だったし、真面目でプロなプロレス映画であり、絆の話であり、なによりも、優しさが自然に連鎖してゆく映画でした。

最後にアレですけど、タイラーちゃんと借金返せよ?


今、ちょうど京都の映画館 #出町座 さんで上映してるんですよね。
その前は #京都シネマ さんでやってて・・・。

非常事態宣言が解除になって続々と対策をされて映画館が再開されたとはいえ、仕事柄、映画館やレストラン、混み合う時間のスーパー、人の集まるところへは行けない自粛生活継続です。

見終わってね。

あー映画館行きたいなあ、って

映画館で映画見たいなあ、って

すごくいい映画だった

映画館で見たかった

すぐそこの映画館で見れるのに

行けない

見れない

それを思ったら涙が止まらなかった

映画館に行きたい

映画館で映画を見たい

この間の大変なアレソレをそこかしこで愚痴ってすみません。
わかってたし、諦めてたとはいえ、やっぱりつらいです。

楽しみにしているグレタ・ガーウィグも、カンヌで「パラサイト」が出る前はダントツの票を獲得していたペドロ・アルモドバルも、ダルデンヌ兄弟も、ホドロフスキーもるろうに剣心もパラサイト白黒Ver.もジョナ・ヒル初監督作品も、AC50のカタマランヨットが登場すると噂のノーランも(予告みたけど出てなかった・・・)見れない。

UPLINK京都さんのOPも行けない。

82年、キム・ジヨンはどうかな?

今年中に映画館に行けるのかな?

友達や家族に会える日が来るのかな?

こんな悲しい思いをしなければならなかった2020年を私は忘れない。


日本語字幕・髙内 朝子
Aya

Aya