今日の試写会は『NOVEMBER 』マスコミ試写会。
冒頭から、刈払鎌を3本脚にしてその真ん中に牛の髑髏のある、日本妖怪の片輪車(かたわぐるま)のような謎の存在が、隣家の牛を鎖で縛り上げて宙吊りにして空を飛んでいく。
何だこれは?
モノクロの映像と共に、摩訶不思議な世界に引き摺り込まれる。
ネタバレというより、この作品は、事前に少しこの世界の理を知っていた方が理解の助けになる。
まず、この謎の存在は「クラット」と呼ばれる「使い魔」で各家庭で飼っている。村人はこのクラットを使って盗みを働く。
クラットは外見的には「付喪神」のようではあるが、道具だけでなく一部生物の頭部などと合体しているようだ。村人は悪魔と契約し、クラットに魂を込める。チープな不気味さはデヴィッド・リンチをも彷彿とさせる。
日本で言う「お盆」であろう。エストニアの “ All Soul’s Day” には死者が帰ってくる。それも霊としてではなく実体を伴って帰ってくるのだ。死者はご馳走も食べるし、サウナにも入る。地域が変われば風習も変わるもんだ。
私も沖縄でそれを感じるが、この作品の世界も死者と生者の世界が近い。
神と悪魔も。
村の若者ハンスは、恋するリーナの心をクラットに盗ませようとするのだが…
「全てのものには魂がある、これがこの映画のテーマです。魂を売ること、魂なしで生きること、そして魂に憧れること。本作は、エストニアのお伽噺とキリスト教の神話をミックスして創り上げた作品です」by ライナー・サルネ監督。
日本と遠く離れたエストニアで、神話的な感覚が意外に近いことにも驚かされる。
全編モノクロの映像の中、摩訶不思議な世界に浸る2時間。他にない映像体験だ。