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映画クレヨンしんちゃん 新婚旅行ハリケーン ~失われたひろし~のsomaddesignのレビュー・感想・評価

5.0
和製・親子型インディ・ジョーンズ〜怒りのフューリーロード〜

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傑作揃いの劇場版クレしんシリーズ。
毎年最高を更新し続けてて偉すぎる。

近年は高橋渉監督と橋本昌和監督が1年毎に交互に作る体制が確立してて、2018年「爆盛!カンフーボーイズ」を担当した高橋監督から橋本監督へ再びバトンタッチ。
「宇宙人シリリ」(2017)「サボテン大襲撃」(2015)「B級グルメサバイバル」(2013)と通算4度目。
脚本も昨年の「カンフーボーイズ」から続けてうえのきみこが続投。橋本監督とは「サボテン大襲撃」「B級グルメサバイバル」とコンビを組んできた盤石の布陣。

年に一度、劇場版でしかクレしんに触れない自分にとっては、今更ながらしんちゃんの声が矢島晶子から小林由美子に変わったことに気がついた。違うってことは分かるけど違和感はなくて、確実に新しくなった事だけ分かる感じ。

過去作通じて一番しんちゃんとひまわりが幼くて(本来の年相応に戻っただけとも)、とにかく手がかかる。「ラブストーリーは突然に」をもじって「子供の尿意は突然に」の通り、突然催すし一張羅にゲロも吐かれる。オムツも替えなきゃいけないし、腹も減れば愚図りもする。

事ほど左様に、子供や家族が足かせになってしまった男女の物語。愛し愛されて家族になったはずのヒロシとミサエの物語に集約していって、幼子や互いの存在を人生の重荷に感じてしまう夫婦や家族の問題に帰結してく構造が素晴らしかった。

自分だって子供だった時代があるはずなのに、いざ自分が子供の面倒を見る段になって「こんなに大変だったのか」と気づかされる事のオンパレード。
着替えにオムツ、飲み物やちょっとしたお菓子、場つなぎのオモチャ、ウエットティッシュ・ティッシュ・タオル地のハンカチetc...子連れの荷物の重さ舐めんな感。しかもこれが子供の人数分で、自分の分の荷物も足されるとなると、世のお母さん方はどんだけ大荷物で日々移動してることか。

兎角ヒロシが格好良くて名言の多い劇場版にあって、今作だとミサエがとにかくカッコいい‼︎
超人的な活躍ってよりは、人間的な未熟さを自覚した上で愛する子供の為に絶対に大人であろうとする姿がカッコいい!
闇雲に強い母親像を描くんじゃなくて、母親も一人の人間として苦悩し葛藤する人間味を描いてるのがよくて、それでも子供の前ではケロリとして見せる強さが胸を打つわけですよ!

一番カッコイイ台詞はやっぱりヒロシが持って行ってしまうのは若干ズルイけど。

全てクライマックスで回収されるとはいえ、序中盤のかったるさは異常。特に夫婦ラブコメなシークエンスの照れ臭さ・見てらんなさったらない。
一方で序盤の意外な要素がクライマックスで伏線回収されたり(だから伏線っていうんだけど)、予想の斜め上をいく展開が楽しかった。

今年のタレント枠はぺこ&りゅうちぇる。旬の二人だし、新婚夫婦で子供生まれたばっかりなのもあって納得の起用。
いつも謎な芸人枠は小島よしお。11年振りの登場はさておき、今子供に人気なのかしら?小島よしお?クレしんとの相性はいいけど。

足かせになってたものこそが、自分の人生にとっちゃ宝物だった事に気づける。個人名じゃなく関係名で呼ばれることのが多い(お父さん・ママとか)日本にあって、覚悟をもってその役割を自覚してくって意味で最も身近な「スパイダーバース」だったかも。

38作目
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