逆鱗

国家が破産する日の逆鱗のレビュー・感想・評価

国家が破産する日(2018年製作の映画)
3.9
骨太な作品!韓国民から見るとどうなのわからないが、国家の裏も描き、民の苦しみも描いた良作。

この作品の経済危機ときっかけは違うが、現在もコロナ渦中で、日本でも中小零細企業や個人事業主は運転資金に困窮し始めているはずである。

また、被雇用者の整理解雇も始まっている。非正規の派遣社員、タクシー運転手の解雇が既にニュースになっている。

そのような人々は、この作品の食器工場のオーナーように、子供の未来、明日の生活のためにどう凌ぐか、耐えるか必死であろう。

日本政府はこの作品の韓国政府のように、内部の権力争いを有利に進めるためか、財務省の進める緊縮財政方針を曲げず、たった16.7兆円の財政出動しかしない。

マスコミは108兆円と煽るが、事業規模と真水の違いを説明はしない。この作品の韓国のマスコミのように真実は伏せている。まるで政府の御用マスコミのようだ。

ある経済学者が説く、疫病恐慌曲線なるものを思い出した。
コロナという疫病による死者とコロナによる経済恐慌による死者が、世の中に発生する。どちらも政府の対策で被害を抑えることができるが、即効性があるのが経済的救済である。今日にでも補償を決めれば、近い将来に給付金を支払うことができる。これにより救われる命がある。
一方疫病対策は効果が出るまで時間がかかるため、毎日死者や感染者が増加する様が報道される。報道は悪いことではないが、これは経済的困窮を隠してしまいかねない。
さらに、経済的困窮で亡くなる数は、疫病のように毎日報道されることはおそらく無く、かつ疫病が落ち着いた頃でも目立たない中で続くであろう。そして疫病の死者数のように総数が振り返られることはない。
その経済学者は言う。疫病による死者と経済的困窮による死者の双方を救うのが政府の役目だと。

因みに、日本より貧富の差が激しい、一見実力主義に見えるアメリカの財政出動は200兆円を超える規模のようだ。4/13により給付金が永住者に配られるとのこと。対象外は年収1100万円程度を超える、約国民の1割程度だけである。

この作品の韓国のように日本はドルペッグ制ではないし、外貨建ての借金もほぼない。国債という国の借金を後世に先送りするのか?という、国の借金なんてものはない。国債の過剰発行により、国民一人当たり870万円相当の借金を負っているというのも真実ではない。
この作品の韓国のように日本がデフォルトの危機になってしまう可能性は低い。

そしてエンディングの歴史は繰り返すの場面。今の韓国社会は、七放世代と若者が言われるような社会。

就職、マイホーム、恋愛、結婚、夢、出産、友人関係 真面目に生きれば手に入る可能性があるこれら7つを諦めないといけない世代が現代の韓国の若者たちである。

かつての経済危機により中小企業はほぼ存在せず、大企業に就職できなかった者たちの受け皿が極端に少ない韓国社会。
収入が安定せず友人関係さえ望めないのだから、そりゃ家賃の安い半地下に住む者も多いのである。

日本も韓国も政府は庶民の味方か?そんなことを考えてしまう作品だった。
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