Stella

オオカミの家のStellaのネタバレレビュー・内容・結末

オオカミの家(2018年製作の映画)
3.7

このレビューはネタバレを含みます

カルト宗教で育ったマリア(出た!聖母の同じ名前)がそこを飛び出して、二匹のこぶたと暮らす話。

単純明快な童話に落とし込まれているからこそ、結構長く記憶に染みつきそう。童話って狂気的な部分を孕んでるものが多いからね。

宗教の人たちをオオカミと表現、追われてるのが3匹のこぶた要素。

監督2人は洗脳されていた2世とかでは無いのよね?だとしたらこのトラウマからくる心情や精神の表現力がすごい。これ、実際にカルト宗教に属していた2世の人が見たら刺さりまくると思う。ぜひ、見てほしい。今、まさにタイムリーだよね。日本では。

序盤、壁に徐々に描かれながら話が進んでいく。その後、立体になり、2Dになったり、3Dになったりを繰り返す。2人の監督だからか、全く違う画風。微妙な揺れと情報量と洗脳要素に脳が拒否し始めて、睡魔に襲われた。

ベースとなったコロニア・ディグニダ(チリにドイツのナチスの残党が作ったカルト宗教で小児男児の性的虐待や処刑がされていた)だけど、これもまたタイムリー。世間はジャニーズ事務所の長年に渡る性的虐待事件で大騒ぎだから。

映画自体をドイツの皆さんにも伝えたいみたいなメッセージもあったように思う。


一度受けた悲しい出来事は、いつになっても、今が幸せでも身体のどこかには存在して、踠いても逃れられない、苦しい、苦しいという想いと、人は誰かに与えられた事しか与えられない。という事に気づく絶望。

カルト宗教でオオカミ達にされ続けた閉鎖的空間に自分たちのエゴで閉じ込めるということ、その他にもマリアがペドロとアナにした事は自分が経験した事で、マリア目線だと幸せな家庭♪なんだけど、彼ら被害者目線ではそうでは無い。

ヘリコプターペアレンツあるあるで、この子は世の中のオオカミから私が守らなければと、思う余りに自由や自立を阻む。
最終的にはこぶたたちからも疎まれて、マリアはやっぱりオオカミの家に戻りたい。と願う。というか、実はオオカミはずっと自分の中、それも結構、核の部分に木のように根付いていた。となる。
これ、この前見た邦画「光」でも同じ描写あったな。

このラストは、全く光が無いので、最後は
希望を見せて欲しかったな…

とにかく映像の作り方がアーティスティック!塗り重ねられていく、作り上げられていく過程を一つ一つストップモーションにしてて、新鮮、そして鬼才!

ペドロが肌の色や髪が急に白人になった描写があったんだけど、人種差別の話なのか、もしかしてマリアも虐待してしまった描写かのか、どういう解釈をしていいのか、ちょっと気になっています。
Stella

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