注:これはサスペンス映画ではありません。恋愛純文学です。
結論から言うとこの作品は、「ミステリアスな青年と内気な主人公の短い季節を切り取った同性愛の純文学」だという前提で観てみてほしい。
低評価をつけた人がいる主な要因は、
サスペンスセンサーが発達した勘の良い観客を妄りにミスリードする「演出」に他ならないと思う。
台詞や音楽、カメラワーク諸々がサスペンスやミステリーのお作法のままなのに、
実際には純文学のラブストーリーなため、
観客は肩透かしくらってしまうのだ。
或いは順序が逆で、「純文学式の行間の美を映像化しようとして、サスペンス仕立てになってしまった」のかもしれないが。
日浅(松田龍平)が過去に何をしたのか?
あの台詞は何かの婉曲表現か?
あの状況で日浅が紺野(綾野剛)に酒を勧めた真意は?
サスペンス映画であれば、必ず恐ろしい結末がきっちり描かれなくてはならないが、
純文学ならばむしろ、全てを種明かししてしまっては野暮である。
細かな伏線や綻びは川の流れに任せて、
我々はただスマホの前で正座をし、
独特の色気と雰囲気の魅力で双璧をなす2人の演技をどっぷりと堪能しさえすれば問題ない。
・綾野剛→庇護欲をくすぐる内気な青年の演技、特に恋をした時の視線の演技
・松田龍平→捉えどころのない飄々としたミステリアスな青年の演技