いずみたつや

ジョジョ・ラビットのいずみたつやのレビュー・感想・評価

ジョジョ・ラビット(2019年製作の映画)
3.8
絶望から生き延びるために音楽を聴き、ステップを踏む。映画や音楽、エンターテインメントが持つ力で高らかに希望を示しそうと試みた意欲作だと思います。

僕のお気に入りはジョジョのお友達ヨーキーくんです。コロコロとした体型と瓶底メガネの可愛らしい見た目と、ちょっとマヌケな振る舞いは見ているだけで幸せな気持ちになれます。

焚書やアンネ・フランクなど、実際の悲劇を思わせるセリフやシチュエーションを散りばめているのも上手いし、ユダヤ系のルーツを持つ監督自身が嬉々としてヒトラーを演じているのも強烈なメッセージ性を帯びています。

ただ、ナチスによる恐ろしい虐殺の「直接的な描写」を抑えたことによるもどかしさは残ります。

終盤の市街戦では子どもたちが爆弾を身につけて特攻する様にゾッとするものの、そのシーンをアイロニーとして描きたいのか、直接的に凄惨さを伝えたいのか、中途半端な見せ方だったのも引っかかりました。

大量虐殺、人種差別、優生思想など絶対に「笑えない」事実の上で痛快にダンスを踊ってこそ、さらに大きな希望を示せたのではないでしょうか。