ちゅう

ジョジョ・ラビットのちゅうのレビュー・感想・評価

ジョジョ・ラビット(2019年製作の映画)
4.3
法の外の正義

その観点で観るにはとてもわかりやすい映画だった、と思う。
なぜなら僕たちは、作中での法(ナチスのルール)が間違っているものであると知っていて、その法を破る行為が正しいと素直に認めることができるから。

少年ジョジョが空想するヒトラーはその法の象徴であり、ジョジョはそれに縛られている。
いや、もっと言えばそれを弱い自分の拠り所としている。
だけど、少女エルサに出会って惹かれていくうちに自分を縛るルールを破って、虐げられている人を匿うという正義をおこないはじめる。

法というものは人間が作るものである以上、現状の追認の側面が強いし、現状を是正するにしても後追いになってしまう。
そして、ある場合には誤っている。
だから、正義と法は必ずしもイコールになるとは限らない。

正義、とかなり肩肘張った表現をしたけれど、ここでいう正義とは人を人として扱うということ。
ジョジョはエルサを友達と認識したことによって人として扱うことができるようになった。
友達を差別することはできないから。

この作品は反戦映画でもあるけど、反戦とは多くの場合、特に戦争の当事者としては、法の外の正義なんです。

だから、抵抗活動をしている人は本当に勇敢で、そういう意味でもスカーレットヨハンソンは素晴らしかった。
温かみのある肝の座った人という役柄がとてもよく似合っていた。
そして、その人物が弱さを紛らわすためにワインに耽溺してるというのが、またなんとも言えずよかった。


演出としては、多くの人が指摘しているように、靴が大切な人の記号としてとても効果的だった。
その靴紐を結んであげるという行為が大切な人を大事にするという意味として上手く機能していた。
もしかすると、その人が寄って立つものも靴が象徴していてそれも大事にする、そんな意味もあるかもしれない。
いや、それはちょっと穿ち過ぎかな。


こういう題材だと、ともすると重い雰囲気になりがちだけど、コメディ調であるのとおしゃれでかわいい色彩のおかげで、とても観易い作品になっていると思います。
ちゅう

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