うたまるさん

新聞記者のうたまるさんのレビュー・感想・評価

新聞記者(2019年製作の映画)
3.4
日本映画でありながら日本映画でないような…

東京新聞の新聞記者望月衣塑子さんの同名小説を原案とした社会派ミステリー。
いや~嫌いじゃないですよ、この内容。

ストーリーは、主人公の東都新聞記者の吉岡(シム・ウンギョン)が、若きエリート官僚の杉原とともに大きな権力に立ち向かっていく内容。
大まかなストーリーを文字で見る分にはあまりこの映画の凄さは伝わらないが、今作品の神髄は攻め込んだ内容と松坂桃李の熱演にあるといっても過言ではないと思う。

前半部分はいくつかのニュースを同時進行として進めるために少し不明瞭な感じにはなるが、エリート官僚の杉原の外務省時代の先輩である神崎(高橋和也)の自殺により展開は大きく動いていく。
「あの人はそんな簡単なことで死を選んだりしない!」と、故人に対して強い思いを抱く杉原は、生前の神崎が担当していた大学新設計画の裏に潜む闇を新聞記者吉岡とともに暴こうとするのだった。
時折登場する杉原の上司である内閣情報調査室室長の多田(田中哲司)の悪役っぷりがこれまたいい!
たんたんと事務的に指示を出すもその言葉の裏には杉原に対して強い圧力をかけている、そんな難しい役柄をしっかりと演じきっていて、そのやり取りは日本映画でありながらまるで韓国映画でも観ているかのようなじわじわ感を感じる。

ネタバレになってしまうので、具体的には書けないが、ラストの10分がこの映画の最重要ポイント。
事実を知った後の落胆と自分の身の振り方に迷い悩むエリート官僚と、彼のことを気にかけ内閣府へと走る新聞記者。その先に待っていた出来事とは!

くー!かなり最後の最後にググっと持っていかれました!
この映画がこれからの日本映画の作り方にも影響を与えてくれるといいなと思いながら今回の感想はここまでとします。

一編の小説を読み終わったかのような本作品は昨今のSNSに違和感や不満を感じる人にもぜひとも見てほしいものです。
うたまるさん

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