ちゅう

新聞記者のちゅうのレビュー・感想・評価

新聞記者(2019年製作の映画)
3.9
この映画が日本アカデミー賞の最優秀作品賞を獲ったことの意味をずっと考えていた。
そして、考えた末に出てきたのは僕の願いだった。


Filmarksは映画のレビューサイトだから、ここで政治思想をうんぬんする気はないのだけど、それでも映画好きであれば死守しなければならないものが一つあるように思われる。

それは「表現の自由」であり、それを内包している「精神的自由」である。

ここに制限をかけられたら映画を楽しむどころではない。
時の権力に都合の良い話しか観ることができなくなるし、自由に感想も言えなくなるから。

映画好きであればこれは同意してもらえるものと思う。


"この国の民主主義は形だけでいいんだ"という言葉が作中にでてくる。
これはある官僚が言う言葉で、その官僚は本当に国のためを思ってそう言っている。
それを正義だと思っている。

多分そう考えている人は官僚でもそれ以外の国民でも多くいるのだろうと思う。


でも僕にとってはそれが本当に恐ろしい。
なぜなら、民主主義は精神的自由があるからこそ成り立つものであるし、民主主義を形骸化させるためには、精神的自由に制限をかけるのが手っ取り早いからだ。

現にマスコミに対して政府が圧力をかけている話もよく聞く。
この映画で描かれているような決定的なリークでもなく、たいしたことのない批判でだ。

つまり現時点で報道の自由が侵害されているということだし、言い換えれば精神的自由が侵害されているということだ。
精神的自由に制限をかけることになんの躊躇もない社会になっているということだ。


映画人は表現者なので、表現の自由が脅かされることに対しては敏感だろう。
この映画が日本アカデミー賞の最優秀作品賞を取ったということはその危機感の表れでもあるのではないか、そんな気がした。
願わくば表現の自由を守っていくという決意表明であって欲しいと思う。

ハリウッドで起こった赤狩りのような悲劇はもう二度と起こらないでほしいと願っている。
ちゅう

ちゅう