いの

ギレルモ・デル・トロのピノッキオのいののレビュー・感想・評価

4.2
クリスマスが近づいてきたら。
寒い夜にホットチョコレートを飲みながら観たい作品。


ギレルモ・デル・トロが描くピノッキオ。手作り感がとても優しくて、芯から冷えきってしまったアタシの心を暖めてくれる。世界観が美しいという、その言葉ひとことで簡単に済ませてはならないくらいに、ギレルモの作り出す世界は豊かだ。


ゼペットパパが息子カルロに木靴を作る場面とか、ピノッキオを作る場面とか、ものづくりを大事にしているギレルモならではのこだわりが其処此処にあって、観ていて本当に気持ちが良い。


ピノッキオ誕生以前から語られることで、ゼペットパパの思いがより伝わってくる。そして、時代設定をムッソリーニ政権下に移したことが功を奏していると思う。オトナの言うことをきかないダメな子といったイメージからピノッキオを跳躍させることができた。伸びた鼻も悪いことばかりじゃなくて、助ける為にも役立てられる。権力を持つ者のいいなりになるんじゃなくて、おかしなことはおかしなことだと率直に言ったり、感じたままに行動したりすることの方がよほど大切なことなんだと言っているような。ピノッキオを道徳的な縛りからギレルモが解放したってことかな。そんなピノッキオだからこそ、虐げられたり悲しい思いをしたりしているいのちと一緒に生きていけるような。


与えることは与えられること、だったか、与えられることは与えることだったか、それともどちらとも正確じゃないかもしれないけど、そのこともとても良かった。進化の過程のなかで、戦うよりも贈答しあう方が生きていられる可能性が高いことをヒトは学んだと、どこかで教わった気がするけれど、与えることができることは幸せなことなんだと、しみじみ思った次第。佐野洋子さんの絵本も、この物語には入っていました。


誰が声を担当しているかとか、そういうことも全く知らずに観ていたけど、ティルダ様の声だけは観ているときに気づきました。ユアン・マクレガーやクリストフ・ヴァルツ、ケイト・ブランシェットなどの出演は、このあと観たドキュメンタリーで初めて知ったこと(ドキュメンタリーには出てこなかったけど、ロン・パールマンも出演)。
ケイト・ブランケットは、ギレルモの映画なら鉛筆役でも何でもいいからやりたいと名乗りをあげたそうだ。なんの役かは観てからのお楽しみ。多分、絶対にわからないと思うよ。もしも当たったら、ホットチョコレートご馳走します♪そのときには、よーく感謝してくれたまえ♪
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