ノラネコの呑んで観るシネマ

スウィング・キッズのノラネコの呑んで観るシネマのレビュー・感想・評価

スウィング・キッズ(2018年製作の映画)
4.7
油断してたら思いっきりえぐられた。
これほど感情の落差が激しい作品は珍しい。
朝鮮戦争中、巨済島にあった捕虜収容所を舞台に、国連軍の新任所長の実績作りのために急造されたタップダンスチームの物語。
元ダンサーの黒人兵を指導者に、メンバーが集められる。
首領様に忠誠を誓うアカの兵士に、敵兵と間違えられた民間人、とにかく踊りたい動けるデブの中国兵に、幼い兄弟を育てる満洲帰りの女性。
人種も国籍も性別もバラバラの彼らを結びつけるのは、体で気持ちを表現したい、心地よくリズムをとりたいという本能的な衝動。
五人のチーム全員が何らかの閉塞を抱えているのだが、ステージの上では誰もが自由になれる。
しかし戦争という邪悪な力は、彼らのささやかな夢にすら容赦なく襲いかかってくる。
ダンス映画としてとてもよく出来ていてカタルシスがあるからこそ、この展開はキツイ。
基本的に、国連軍も人民軍も権力を振りかざす者は等しくクズに描かれる。
元々資本主義も共産主義も、外国人が作って南北に押し付けてきたもの。
庶民には何の関係もないことで、同じ民族が殺しあう悲劇に「フ○ック、イデオロギー」なエネルギーが炸裂する傑作。
ブログ記事:
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