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スウィング・キッズのkのレビュー・感想・評価

スウィング・キッズ(2018年製作の映画)
4.8
苦しい。歴史の教科書で寝ぼけながら知った朝鮮戦争が、やっと私の人生に刻まれた。
隣の国の残虐な歴史。ササッと学んだ気になって、あっさり受け流していた。
朝、トーストに急いで塗りつけるマーガリンみたいに。

学生時代の私には、愛する人の名前を泣き叫ぶ人も、身体の一部を失った人も、むせ返るような砂埃も、真っ黒な血の海も、たぎるような憎しみも、なんにも見えていなかった。

いま、韓国では、fact(事実)とfictionを合わせた造語「faction」というジャンルがあるらしい。
この作品のfactは1枚の写真。
捕虜が仮面を被り、自由の女神の前で踊っていた。

ダンスはダンスで、それ以上でも以下でもないはずなのに、裏切りとなり、差別となり、悪となる。
FUCK IDEOLOGY.
ダンスで人は心を通わせることが出来る。ダンサーとダンサーの間には、言葉を超えた音楽が生まれる。
争いの前では、簡単にかき消されてしまう音楽。

画面越しでさえ、銃を突きつけられれば、自分の鼓動しか聞こえなくなる。
クリスマスのあの夜が、もし現実だったとしたら、私には何も想像が出来ない。
ただ恐ろしさに震え上がることしか出来ない。

坂本龍一が、「音楽の力という言葉が1番嫌いだ」と新聞で話していらっしゃるのを思い出す。
音楽の社会利用、政治利用が僕は本当に嫌いです、と。

「ある時にある音楽と出会って気持ちが和んでも、同じ曲を別の時に聞いて気持ちが動かないことはある。
音楽に何か力があるのではない。」

思わず心が踊った sing sing singも、自由のシンボルに感じたmodern loveも、あのとき、あのダンスだったから、あんなに鮮やかだった。

涙も輝いた。

ラストのジャクソンの指先は、ひどく乾いていた。

*

期待を裏切らない韓国映画、またまた上陸してくださった。
本当に素晴らしかったけど、あまりにも辛かったので、、★5にしなくてすみません…制作陣のみなさま…。
舞台となる巨済島のセットは全てこの映画のために制作されたそう。
監督はダンスと音楽を完璧に調和させるためにワンカットずつこだわり抜いたみたいで、臨場感と迫力に満ちていた。

特にグッときたシーンとかコメント欄にネタバレで書きます。
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