もやし畑

天気の子のもやし畑のレビュー・感想・評価

天気の子(2019年製作の映画)
4.4
ボーイミーツガールの極致、究極のエゴイズム映画だ!

新海監督自身が賛否両論あることを自覚しながら製作したとのことで何が起きるのかとドキドキしながら見たけど、そういうことか。これは賛否両論あるに違いない。

因みに私は大好きだ。恋した女の子に会いたい。その子の為にならなんだってする。純粋で危なっかしくて、真っ直ぐな映画だと思う。

SNSの普及は、人に情報を発信しやすくさせた反面、モノに対する意見というものをより直接的にした。「人に迷惑をかけるな。」「その考え方はダメ。」「そのやり方は間違ってる。」「みなさんこいつこんな悪いことしてます。拡散して下さい。」「それは廃止するべき。」それらは確かに正しい意見なんだろう。正しいということには私も同意する。でもそんな世界に、私はなんとも言えない息苦しさを感じている。

正しい世界での一番無難な生き方はみんなに合わせることなんだと思う。でもその世界では沢山の自分を殺さないといけない。逆に自分の思い、意思を貫き通した生き方はやはり誰かに何かしらの迷惑をかけることは避けて通れない。ただその迷惑を自覚した上で自分の好きなように生きて行く生き方の方が人生面白いし魅力的だと私は思うのだ。

この作品で、新海監督はアニメ監督の中で間違いなく抜きん出た存在になったと思う。

雨、雲、差し込む光と言った色鮮やかな作画、田中将賀のキャラデザ、映像のカメラワーク(この演出のブレーンは誰かいる気がする。)、有名俳優起用ながらセンスある声の人選、作品とリンクしたRADWIMPSの曲、どれも素晴らしかった!!不安要素、本田翼さんも全然違和感なかった!「そこだけは君の想像通りじゃないよ笑」

集客力で見ればポスト宮崎駿といえるかもしれない。情報を詰め込んでわからなくした上でまとめ上げる宮崎映画と、情報を引き算してよりメッセージ先鋭化させていく新海映画にはやはり違いがあるわけだが。

最後に一緒に見た友人は、主人公の帆高の行動原理、特に東京に出てきた理由が浅いと感じたと言っていたけど、帆高の感情に共感できなかったのかな。子供が大人になる一歩手前、世界に見放されている、置いてけぼりにされている、孤独感、恐怖感、焦燥感と表現したら良いのだろうか。あの頃特有の感覚、それこそライ麦畑でつかまえてのあの感覚は誰もが通る道ではないらしい。そこに共感を得られなかったことに寂しさを感じた今日この頃。
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