Junsss

火口のふたりのJunsssのネタバレレビュー・内容・結末

火口のふたり(2019年製作の映画)
3.0

このレビューはネタバレを含みます

<キャスト>

・永原賢治(柄本佑)
離婚、退職、再就職後も会社が倒産し、なにもかも失った男。

・佐藤直子(瀧内公美)
賢治の5歳下のいとこであり、かつての恋人。


<あらすじ>

-起-

関東地方に住む中年男性・永原賢治は、定職に就かず、ときどきバイトをして暮らしていた。
大きな川べりで釣り糸を垂れていると、賢治の携帯電話に父親から着信が来る。
賢治のいとこの直子が結婚することになり、結婚式に出ろというのが用件だった。
賢治は休みを取って、そちらへ行くと言う。
賢治は秋田県にある実家へ行くと、ごろごろ寝ていた。
そこへ、佐藤直子がやって来る。

賢治と直子はいとこで、家も隣同士だった。賢治のほうが5歳年上。
東京へ進学した賢治を追って、直子は東京の専門学校へ進学した。
東京時代に恋仲になった賢治と直子だったが、いとこ同士で血が濃すぎる、身内に反対されると思ったふたりは別れる。
賢治は一度結婚して息子を設けたが、うまくいかずに息子が1歳になる頃に別れてしまう。息子は現在6歳。離婚してから会っていない。
その後も賢治は秋田に戻らず、東京で暮らし続けていた。
直子は賢治と別れた後、秋田へ戻って父親と暮らしていた。

やがて、直子は陸上自衛隊に所属している40歳のキタノという男と結婚する運びとなる。
賢治の家へ押しかけた直子は、買い物に付き合ってくれと頼む。
48インチのテレビとブルーレイディスクを購入し、新居に設置したい直子は、賢治にテレビを運ぶよう言った。
賢治は道中、直子と互いの近況話に花を咲かせる。

-承-

新居にテレビを運んでもらった直子は、賢治にお酒を出す。
直子は自室で、昔のアルバムを探し出し、賢治に見せてくる。
それは賢治と直子が付き合っていたときに撮影した、ふたりの色っぽい写真。
アルバムを見た直子は、「この写真がいちばん好き」と賢治に言う。
ふたりで富士山の火口に吸い込まれようとしている写真。
覚えていないと言う賢治に、直子は説明する。
それは賢治がべろべろに酔っぱらって、夜中に急に直子を呼び出したときに撮ったものだった。
一緒に死のうと心中を持ち掛けた賢治は、直子と盛り上がり、富士山の火口で撮影した。
それを示した直子は、賢治に「今夜だけ、あの頃に戻ってみない?」と誘う。
賢治はそれに応じ、直子と関係を持つことになる。
関係を持ったあと、賢治はなぜ直子に結婚するのか聞く。
直子は「母になりたい」と言った。
子供を残すために結婚すると言う直子は、2年前に子宮筋腫が見つかったことを挙げて、筋腫が大きくなる前に産みたいと言う。
直子はひと晩だけのつもりだったが、久しぶりに関係を持ったので、賢治はたまらなくなって、翌日また直子のところへ押しかけてしまう。
直子は賢治に押し切られるまま、関係を持った。

-転-

町にあるレバニラのお店に賢治を連れて行った直子は、昨日だけのつもりだったと話す。
ごねる賢治に対し、「結婚相手が出張から戻ってくるまで」と直子は約束した。
あと5日間ある。
久しぶりに関係を持つので、賢治は直子に溺れる。
用を足しに行った賢治は、局部が腫れていることに気づき、直子に言った。
昔にも同じことがあったと、直子が言う。
こすりすぎなのだと結論付けたふたりは、昔は濡れタオルで冷やしたことを思い出した。
ふたりで冷やす。
料理が得意な賢治が、食事を作った。
食べながら賢治は、直子に母親になってどうするのだと聞く。
子どもを産みたいから結婚するというのは、へんな論理だと賢治が指摘すると、直子は、賢治にだって子どもがいることを指摘した。
賢治には子どもがいるのに、これから直子が子を持とうとすることに文句を言うなと、直子は言う。
翌日ふたりでスーパーに買い物に行き、ハンバーグを食べる。
小さな地震があった。風呂に入りながら、賢治と直子は地震の話題をする。
直子はお腹が痛くなり、ハンバーグにあたったのだと言った。
賢治は直子の看病をする。

-結-

亡者踊りの祭りを見に行ったふたりは、駅前のビジネスホテルに泊まった。
お店に入った直子は、賢治になぜ離婚したのかと聞く。
賢治は、浮気がばれたからだと答えた。
直子は賢治に、賢治の母親が昔言っていたことを打ち明ける。
賢治が結婚をしたときに、賢治の母が直子にぽつりと、「賢治と直子がいっしょになればいいと思っていた」と言ったそう。
それを聞いた直子はその当時、しまったと思った。
賢治も、自分の母がそう思っていたと知り、驚いた。
翌朝、ビジネスホテルで起きた賢治は、直子が去っているのを知る。
結婚式の朝。
父親から電話をもらった賢治は、直子の結婚式が延期になったと知る。
賢治が直子に探りを入れると、理由はなんとも奇妙なものだった。
「結婚相手が極秘任務に就くことになり、結婚できなくなった」そう。
賢治は、自分たちの関係が結婚相手に知れたのかと思ったが、そうではなかった。
富士山が噴火することが判明し、災害派遣部隊として結婚相手のキタノは配属になるのだそう。
式は延期とのことですが、実質的には破談になったと直子は言う。
直子は、結婚延期の理由を知りたくてキタノのパソコンのロックを解除し、パソコンのファイルを片っ端から閲覧した。
それがもとで結婚相手に叱られていまう。
結婚が白紙になったことで、賢治も直子も、気が抜ける。
東京に10センチの火山灰が降るそう。
「もうなにが起きてもおかしくないよ、この国は」
そう言った直子は、とにかく賢治に、性行為をしようと誘う。
テレビで報道を見ていると、思ったよりも富士山の噴火が激しそうなので、賢治も直子もテレビの前で黙った。
まだ噴火は起きていない。
賢治はテレビの画面を見て、直子に「中に出してもいい?」と聞いた。
直子は笑って、承諾する。


<感想>

恋人関係にあったいとこ同士が結婚式を前に再会し、当時に戻って噴火する火口のごとく情事を重ねていく話。
この世の終わり的な出来事(富士山の噴火)が起こる中で、“身体の言い分に従おうじゃないか”という結論に達する。
世間の価値観や倫理に囚われず、"身体がしたい事をすればいいんだ”という、ある種の人間の自然を描いているところが本作の見所。食べて、寝て、セックスしてるだけの映画なんだけど、"人間という生き物"をよく映している。
モザイクのかけ方が雑じゃないか?と最初は思った。かけるくらいなら写らないような視点や動き方ができたのではと。でも、観ていくうち、撮り方を操作してはこの映画の人間らしさ・生々しさを台無しにしてしまうのでは?とも思った。そう思うと、後半は観づらさを感じなかった。
これだけリアルに表現する役者の演技力に驚嘆。柄本佑はさすがだし、瀧内公美の底が知れない感じでアンニュイな演技が魅力的だった。キャストが2人だけでベッドシーンが6割程占めてるというのがかなり挑戦的。それでいて、嫌らしさ、汗臭さみたいなものは感じなかった。
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