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AI崩壊の教授のレビュー・感想・評価

AI崩壊(2020年製作の映画)
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一番最初に述べるべきはタイトルの「AI崩壊」に主題歌がAIだというダジャレをどう捉えていいかということ。
なんというか無礼というかセンスがないというか悪意があるというか。
肯定すべきか否定すべきか悩ましい。

その上で、結論から言えばラストの展開如何では「大傑作」になり得た作品。
娘役の「心」の結末を完全なるバッドエンドにし、AIである「のぞみの生まれた理由」をしっかりとバッドエンド方向に描きこめば、意表を突きつつ、映画的にも辻褄の合うラストにできた…はずなのである。

序盤からラストに至るまで、本作は残念なことに欠陥と緩さに満ちた作品である。
というか、日本のメジャー作品のエンターテインメントってこんなものです、という諦めを改めてなぞらせ、実感させる作品だということ。
少なくとも映画でしか表せない世界観は、残念ながら映像的にも表現されていない。

バラをモチーフにした(どうやら貝殻らしい…)のであろう「のぞみ」の心臓部。がウンコにしか見えないし。そのスペックと国民への浸透度とその影響とやらの具体的な部分でのリアリティがよくわからない。
展開に関してもステレオタイプなキャラクターと、立場や権限の割に若過ぎる配役のリアリティのなさ。

終盤の反射、を使った伏線とは言えない伏線。そもそもAIと人間の関係性のドラマすら稀薄な上に絡まれる「政治」のドラマ。
余貴美子演じる総理大臣と、現実の総理大臣とのあまりの乖離ぶりにリアリティが全く持てないし、現代批評をテーマにしている映画としてはその現実へのアプローチとしてなんの風刺にもなっていない。

入江悠監督の評価、の割に結果、大作となるエンターテインメントになると、こうなってしまう、というのが非常に絶望を感じる。
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