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ヒトラーVS.ピカソ 奪われた名画のゆくえのInagaquilalaのレビュー・感想・評価

3.5
タイトルでは「ヒトラーVS.ピカソ」となっているが、もちろん、この2人が直接交わるわけではない。ヒトラー的なものと、ピカソ的なもの、互いの考えが象徴するものとして作品中では描かれる。具体的にピカソの作品が本格的に登場するのも、ほとんど終盤に差しかかってからだ。それよりも、描かれていくのは、ナチスドイツによって奪われた美術品の行方と、いまなお続く、その奪還の活動だ。これはいわばその歴史的事実を描いたドキュメンタリーだ。

ヒトラーとゲーリングの美術品をめぐる争奪戦、ナチスドイツに近かった美術商、そして戦後何10年も結果して発見された略奪された美術品、興味深いエピソードが次から次へと登場する。かなり専門的な解説も入るのだが、それがまた、この空前絶後の略奪の背後になにがあったのかを証明していく。ということで、「奪われた名画のゆくえ」というサブタイトルのほうが、このドキュメンタリーにはふさわしいタイトルではないだろうか。気がつかなかったのだが、劇中の案内人を務めているのが、パオロ・ソレンティーノ監督の映画でおなじみのトニ・セルビッロ。このところナチスものをよく目にするが、これは美術という側面から見た、戦争を描いている。
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