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童年往事 時の流れのkouのレビュー・感想・評価

童年往事 時の流れ(1985年製作の映画)
4.5
ホウ・シャオシェンの少年期を基に、淡々とある少年が青年になるまでを描く。ノスタルジックではあるのだが極力表現を抑え、ある家族を描きながらその背後には台湾の情勢が映し出される。

直接的ではないが、戦車の通った後や兵士の乗る馬が通り過ぎる様、ラジオから聞こえる放送など、当時の不穏な雰囲気をふとした所で描く。登場人物達はそれぞれの気持ちを吐露するようなわかりやすい演出ではなく、彼等の行動でみている側が想いを馳せるのだ。

不安定な情勢、両親や祖母に取っては故郷から離れた土地。慣れない土地で生き、そして死んでいく。主人公アハはそんな中で喧嘩に明け暮れたり、性への目覚めがある。少年から青年へと成長する中での苛立ち、エネルギーが感じられる。

物語の後半、ある悲劇的ななんとも言えない虚しさと罪悪感に包まれる。それは監督自身を反映した今作で、過去の心の中にあるつかえを表しているようでもある。故郷を思い死んでいった人、そしてその故郷を知らないホウ監督。なんとも言えない複雑な感情を呼び起こさせる、素晴らしい一作だった。
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