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ラヴィ・ド・ボエームのpikaのレビュー・感想・評価

ラヴィ・ド・ボエーム(1992年製作の映画)
3.5
国や人間が変わればドラマも変わるといった具合に、フランスを舞台にしたためか他の作品と比べると喜怒哀楽などの様々な感情は、重ねて混ぜ合わせるでなく細かく刻んで炒めたような印象で、一つのシーンの中で笑える瞬間と切なく胸が締め付けられるような瞬間とが交互に訪れ、ドラマを楽しみながら感情の波が行ったり来たり寄せては返し、画面の向こうの虚構の世界なのにいつの間にやら一緒にタバコをふかして空間を共有しているような、そんな独特で素敵な映画体験だった。

金銭や生活に対しては無頓着で芸術に対しても中途半端だが、友情に対しては真摯なルーザートリオの山あり谷あり。
夢も挫折もゆるゆるな生温さで教訓めいたものもなく、パンチ力抜群な笑い所と泣き所が映画と言う娯楽だから、ではなく人生とはそういうもんだ、とばかりな自然さで叙情的。
無表情と省略は通常運転ながらも、孤独ではなく仲間と恋人がいるからか台詞も多く自分を表現するという丁寧さがストレートに笑えて泣ける。
もっとドライでもいいんだけどなぁと思いながらもたまらなく愛おしい傑作。最高です。

今作のカメオはルイ・マルとサミュエル・フラー。いい役といい味。
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