真田ピロシキ

アスの真田ピロシキのレビュー・感想・評価

アス(2019年製作の映画)
3.7
実に10ヶ月ぶりに映画を見た。全く映画情報を仕入れなくなったので本作も事前情報ほぼ0で臨んだのだが、『ゲットアウト』の監督なので今回も人種差別ホラーだろうと思い込み、Black Lives Matterが吹き荒れる今見るにはうってつけと考えてたのに見てても全然人種とは関係ない模様。なのでしばらくは映画の主題を見出すのに四苦八苦。

ようやく3、40分経った辺りから見え始めたのは格差。酷い目に遭う主人公やその友人が別荘にボートを持つような裕福な家庭でかたや襲撃者の持たざる様と言ったら。作中「まるでデモのよう」と言われるのもあって、かなり直接的にテーマは語られてるように思えた。

だけどこの時点で疑問になるのは持たざる者がバケモノになってる点。普通逆じゃん?主人公にとってのハッピーエンドで終わるので持たざる者の革命は失敗になるのだが、ここで唸らされたのが気付きそうなものなのに全然気付けなかったオチ。あれがただのどんでん返しじゃなくて、実はとっくに革命が成功してたってことになるのだとしたら。そう思うと実に真っ当な正しさを追求してると言えるし、同じ存在でありながら持つ者と持たざる者に別れる極端さも現実で見舞われる不条理と重ねて感じ取れる点が多々ある。前作同様突拍子のない展開があるが、今回は織り込み済みなのでマイナスにもならず、最終的な満足感はなかなか。