にしやん

ある町の高い煙突のにしやんのレビュー・感想・評価

ある町の高い煙突(2019年製作の映画)
2.3
茨城県日立市に今でもある当時としては世界最大の大煙突建設と明治から大正にかけての日本の工業化と公害発生の物語や。煙害に苦しむ村の若者が、一高(現東大教養課程)進学のチャンスを捨て、農民のリーダーとして公害企業と戦う道を選び、企業の担当者や町の人々も巻き込み、やがて社長も動かして、当時世界一の大煙突を作るっちゅう美談を期待して映画観たんやけどな。
確かに序盤はまあまあやねんけど、中盤からは映画の本筋からちょっと外れて、主人公の青年と企業の被害補償の課長とその妹との個人的な交流を描いた脇道へと話が脱線してしもた感じやな。特に主人公と課長の妹とのロマンスの立たせ方とかないやろ?被害者団体のリーダーが公害企業の補償担当者の妹と、それも人目盗んでデートしてるとか普通は完全にアウトちゃう?本人等も劇中後ろめたさを自覚してるような台詞をしゃべっとったけど、観てるわし等かて後ろめたさを感じてしもたわ。これはこの映画にとっては致命的やと思う。ほんまに白けてしもたわ。制作側もその弁解として大煙突のアイデアはロマンスがきっかけみたいなエピソードを持ってきて言い訳しとったけどな。新田次郎の原作には出てた主人公の許嫁の存在を全部カットしたんが結果としてあかんかったんちゃうかな。
この物語は公害被害者である農民と企業とが共存を目指して、一体となって問題に取り組んだってとこが話(ええか、悪いかは別にして)として一番の描き所やのに、その辺の話が殆どあれへんのも全然アカンわ。
企業の社主の「利益を上げんと会社は潰れてまう。せやけど、地元を泣かしとったら事業は成り立てへん」の信念と、その信念に従い国に逆らって大煙突を立てたことについては、その時代を考えたら立派やと思う。今の時代でも中々こんな気骨のある経営者はおらんのとちゃうかな。今の日立に果たしてできるんやろか?
ところで、原発立地自治体に金ばら撒いてんのも、この社主の信念からか?あっ、ちゃうか。原発マネーは税金と電気料金やもんな。
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