真田ピロシキ

FYRE: 夢に終わった史上最高のパーティーの真田ピロシキのレビュー・感想・評価

4.0
ゾンビ映画です。大失敗した音楽フェスが題材のドキュメンタリーなのにまるでゾンビ映画を見ているかのような寂寥感を味わえます。避難キャンプにしか見えない豪華(笑)テントが隙間なく海岸に設置されていてそれすら足りてないので奪い合う客。帰ろうにも飛行機はなく消費精神に訴えられて群がった客がまずゾンビ。実態のない漠然としたイメージを素晴らしいものかのように拡散させて被害者を増やしたインフルエンサーもゾンビ。殺気立って開催者を問い詰める現地スタッフの様相もゾンビ。詐欺で起訴されて保釈中にチケット購入者の個人情報を使って新たなビジネスを開拓する主催者はゾンビの王。炎上をネタにする人たちも屍肉漁りのゾンビ。即ちこの映画を興味本位で見てる私達も。こんな寒気のする体験はなかなかないね。流石に誇張をしすぎじゃないかなと思うがフィクションにしたらリアリティがないと言われそうな事がしばしば起こるのが現実なわけで。

誇大妄想狂の主催者が現実的な問題点を解決するビジョンもないまま始めたビッグイベントに乗せられて、太鼓持ちメディアや有名人が扇動する。計画もなければ予算も時間もない。推し進めるのは精神論を元にしたやりがい搾取のブラック労働。あれれ?どこかで聞いた事があるな。東京オリンピッ…「最初のウッドストックだって酷いカオスだったけど成功したんだ」と昔だから出来た成功に縋るのも似てますねー

「乗るしかないこのビッグウェーブに」様々なジャンルでのそんな気持ちを煽るイベントや商品に対する嫌悪感がMAXに達している身としては正直言って痛快。もう仰々しい商業主義に付き合ってやるのやめようぜ。笑えたのは免許取得1ヶ月で操縦を任された小型機パイロットの話で「マイクロソフトの優秀なシミュレーターで練習したから大丈夫さ」って。プレステ万歳!だった『スネークフライト』の続編か?