このレビューはネタバレを含みます
うわ、なんだこの映画。何とも言えない余韻。これを女性監督が作って新婚の蒼井優が演じていることに狂気を感じる。
序盤の笑いのセンスにあふれた、きたろうと高橋一生のほのぼの工場コメディからの不器用なプロポーズは連ドラなんかで見たいと思わせられるくらい楽しくて見入ってたんだけど、キンキンが亡くなってからどんどん変な方向に転がっていく。
そもそもラブドールの型どりきっかけで出会って、相手に理想を抱いて、でも理想とは違って、相手が自分の思っていたような理想を詰め込む人形じゃないとわかって、でも死に向かっていく彼女を形にして残してく作業をするという話がだいぶすごいな。
すべてがラブドールを作るまでの布石であり、その作業によってパートナーを理想の入れ物から開放していくとは。
お互いに嘘ついていたことを共有してようやく真の夫婦になって、最後は文字通りつながったまま終わる。まあこれも「ロマンス」なのかな(笑)?
それにしてもドール「そのこ」を作って哲男がそれを“試して”盛り上がってきたとこで我に返って無表情の「そのこ」を見る場面はマジできつかった。あの「そのこ」の顔トラウマになりそうだぜ。人形恐怖症としてはラブドールは絶対にいらない。怖すぎるだろ。
とにかく蒼井優が凄かった。あの痩せ方はすごいぞ。色気もやばいけど、優しげな中にゾクッとするような目つきをしたりと油断ならない。毎回表情がすごい。
ただ絶対に乳首だけ死守してるのは何で?これは多分事務所の意向かな?いまさら乳首だけ隠してて何の意味があると言うんだ。
それを受ける高橋一生の引きの演技も見事。
そしてもう普通に復帰してもいい気がするピエール瀧に、渡辺えりのどこにでもいるおばちゃん感、それから浮気相手の三浦透子が素晴らしかった。あのヤサグレ可愛さ絶品やで。リアルにいってしまいそうな不倫相手。
でも一番味わい深い演技していたのはきたろうかな。あのスケベじじいだけど純真さもある絶妙な感じ何なんだろうか。
きたろうが退場してから物足りなくなったのは否めない。可愛いわぁ。
どうしても看過できない部分として、そもそもラブドール工場に勤務していることを隠して結婚までこぎつけられるか?普通に実家に両親もいる相手なんだから絶対に調べられるだろ。そして娘ソックリのラブドールが売られているのを見た両親の気持ちやいかに。哲男以外の園子の家族が出てこないからなんだかモヤモヤする。キンキンの葬式の場面で絶対にばれるだろ。
あと、その子が死ぬまではまるで無人の工場で哲男が作業しているかのような描写の連続だったのにいきなり拡大生産、販売の時だけまたみんなが出てくるのがちょっと印象悪い。あいつらにあんな分かったようなツラされるのきついな。
最後の「スケベないい嫁さんだったな」ってセリフもなんだか飲み込みづらかった。あれを「スケベ」なんて言葉で片付けるなよ。
女性監督じゃなきゃ作る前にバッシング食らいそうな映画だったけど、よく作ったと思う。本編自体は好きなところもあれば嫌なところもあるという塩梅でした。