もめん豆腐

ある船頭の話のもめん豆腐のレビュー・感想・評価

ある船頭の話(2019年製作の映画)
4.2
題字の書体と椿に血がついているところから、何か良からぬことが起こることをオープニングから感じさせる、いい始まり方。
選ばれた音楽も風景や話を繋げる役割を果たす。
美しい風景。それはまるで中国の墨絵をカラーにしたような、それが終始描かれている。
時代設定はわからないが、明治か大正か、そこで暮らす人たちの様々な営みを垣間見ることか出来る。
建設中の橋が完成したら職を失う船頭を柄本明さんが演じている。
人の良い船頭の心の不安や鬱憤を現とファンタジーを混ぜて、観る者に違和感なく魅せているところが圧巻。同じような気持ちになったことある人も多いと思う。
自然と共存して生きるマタギとしての死に際も現代に生きる墓を持ちたくない人になら、共感しえるだろう。
少女の存在で船頭の生活に変化が訪れることになる。それは彼の周りにも悲しい変化を呼ぶことになってしまう。
先に書いたように、映像が息を呑むように美しく見惚れていたが、エンドロールで撮影監督がクリストファードイルさんだと知り、納得。しかも衣装はワダエミさん。超一流の仕事人たちが最高の仕事をした作品。
オダギリジョーさんが、こういった作品を描くとは思わず、ただただ感嘆するのみ。セリフも少なく、観る者に委ねる判断も非常に好み。
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