凄い物を観てしまった。
映像、音響・キャスト、ストーリー
全てが凄い。素晴らしかった。
仙人のような船頭を柄本明が演じている。
家族を持たず、故郷にも帰れない渡し船の船頭が、川を流れて来た少女と暮らし始める。
不便な村を渡し船が繋いでいるが、建設中の橋が出来てしまえば渡し船は必要とされなくなってしまう。
いろんな気持ちを抱え、村人に慕われ、頼りにされる日々を送る船頭。
やがて橋が完成し、生活や可愛いがっていた少年が変わって行く。
そして事件が
圧倒的な映像美
後半にかけてはそれが狂気のように感じてしまう場面まで。
穏やかな美しさから恐ろしいほどの美しさになって行く。
主人公の心のようだ。
人間は知らない間に他者を傷つける。
不用意な挨拶のような言葉の凶器。
悪意。
悪意がないものも。
その身になれば解るであろう凶器が、現実を主人公に突きつけ、追い詰める。
離れない不安。
橋が出来れば…
心に刺さり続ける棘がもう一人の自分を作ってしまう。
いつ壊れても不思議じゃない。
でもこの人は穏やかな笑顔をたやさず客をもてなし、船を漕ぐ。
この船頭を演じる柄本明さんが素晴らしすぎる。
脇を固める俳優さん達も主役級の豪華なキャスティングで、要所、要所でハッとさせられる。
呑み込むような音に、心臓を掴まれる演出。
美意識の塊のような傑作。
監督が音響にこだわり、自ら上映劇場に足を運び、それぞれの会場に合わせて音の調整を施した作品。
監督から、
「映画館以外では半分も面白くない作品なので、DVDも買わなくていいし、レンタルもしなくていい。配信されたらダウンロードもしなくて良い、劇場でだけ観て下さい、と周りの人に伝えて下さい。」
と、人に薦める際の注意があるほどのこだわりよう。
上映が拡大されて大勢の方にこの贅沢を堪能して頂きたい。
感動を散らしたくなくて、電車やバスを避けてタクシーで帰宅。
車の中でリピートチケットを購入した。
この作品を世に送り出した制作陣に感謝。