ツクヨミ

メトロポリスのツクヨミのレビュー・感想・評価

メトロポリス(1927年製作の映画)
3.3
セット美術の凄まじさで見るSF近未来と資本主義.共産主義の対立。
最近個人的にサイレント映画にハマっており、"サンライズ"を見た流れでドイツ表現主義のSF金字塔って噂を聞いた本作を見てみた。
まずオープニング、交差する光が幾何学模様を描き次第に高層ビル郡が聳える近未来ビジュアルがひしめくディゾルブ編集におったまげた。セット美術の精巧な作り込みが何層にも積み重なり表現主義を構築する映像がなんとも楽しい、あと巨大なセットビジュアルはリドリー・スコット"ブレードランナー"に影響与えてそう。
そして本筋の物語は資本主義と共産主義の対立を主軸として進行する、1920年代はエイゼンシュテインの"戦艦ポチョムキン"もあり当時の世界情勢がいかにストライキ的な危機を迎えていたかありありとわかる。またSF的アンドロイドが市民を洗脳する様は後のナチスのプロパガンダの様相まで見えてきて怖い。
しかしなんといっても今作はやはり革新的なデザイン美術の宝庫なのが魅力か、アンドロイドの機械的造形やミニチュアセットを拡大した巨大都市.果ては富裕層が住んでいる悪魔の口みたいな入口などクリエイティブながらめちゃくちゃ金かかってそうだった。調べてみたら製作費がかさんで制作会社が倒産していたり、世界各国で異なるバージョンがあり全然違う編集になっていることがある辺鄙な歴史を辿った過程もまた面白い。
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