Aria

燃えよ剣のAriaのレビュー・感想・評価

燃えよ剣(2021年製作の映画)
3.5
まじでもったいない。
栗塚旭版を見た事があるので、岡田版の違いは結構感じたけれど個人的に時代劇として良かったと思う。ただ、時代劇に疎い人、歴史に疎い人は初っ端から置いていかれる作品だと思う。

斜め前のカップルは上映後、開口一番「話わからなかったね」と言ってた。

劇中の言葉遣いもそう。私は時代劇慣れしてるから全然分かるけれど、見慣れて無い人からしたら最早日本語に聞こえないと思う。
大河だって言葉はちゃんと現代風に変換してるのに。

これから先、時代劇を残していくにはいかに良さを残しつつ、若い世代にも伝わるように魅せるかにかかっているとおもう。

難しい話や言葉を分かりやすい言葉や表現に変換したり捕捉して伝えるのが必要。古き良きを全部踏襲してたら誰もついてこない。

また、演者の名前を英語表記したりサブタイトル(BARAGAKI UNBROKEN SAMURAI)をつけたりして海外を意識しているなら士道のなんたるか、朝廷と幕府、尊王攘夷等々色んな事をもう少し丁寧にするべきだと思う。

こういう見せ方をする限り、時代劇=難しい、の考えが先行して衰退するだけだと思う。

これらを考えると、ドラマ、映画、アニメ、漫画、ゲーム、ありとあらゆる分野でさんざん擦られまくってきたこの新撰組、幕末維新…という題材を、今、あえて原作に忠実に且つ現代人を置いてけぼりにするかたちで作る意義は何なのかと疑問に思う。

まだアニメや漫画の方が人に見せようという気概を感じる。

キャッチの通り原田さんも時代を追わず(合わせず)、夢を追ったのかもしれない



時代劇愛が強いが故に辛口感想だけど、個人的には本当に良い作品だと思う。

七里さんの感じはめちゃくちゃ良かった。
燃えよ剣は七里さんあってこそ。本来であれば途中で退場するのだけど、北海道まで出てくれたのが嬉しい。これぞ因縁の七里さん。佐絵を入れる余裕はなかったのが残念だけど…。

あとキャスティングが絶妙
新撰組のそれぞれの面々が出てくる度に「え、こいつ?」と偏見から入ったけど、ものの数秒で配役ぴったりやん!という感想に変わった。

村本があんなにハマると思わなかった。これから先他の時代劇でも求められるキャラ位置だと思う。

あと虹郎。虹郎はちょっと出るだけでも確実に爪痕残すね。もっと見たいと思った。
あと芹沢暗殺シーンはあっさり終わった栗塚版に対して原田版の方が見応えがあった。

芹沢さんへの対応と、その際の近藤さんとの会話が土方の曲げない信念を印象づけるには十分だった。
そういう意味だと山南さんのくだりの見せ方も良かったな。役者さんもナイス脇役だった。

尾上右近さんの会津藩主もめちゃくちゃ良かった。幕府と御門の間で一番振り回され、疲弊していく様と発する言葉の強みが素晴らしかった。

栗塚旭版が池田屋事件までで、佐絵との恋模様や池田屋事件の見応え抜群の殺陣と、エンタメ作品として完璧だったのに対し、岡田版は土方さんの生き方・人生にスポットを当てている印象。史実と、オリジナル要素含めた原作に忠実に沿おうとしてた。

だから教科書や古い言葉で書かれた歴史小説を読んでいるかのような、頭にストンと入ってこない内容になっていた感がある。

ただ、「話わからなかったね」で終わられるには勿体なすぎる作品なので、少しでも分かりたいと思う人には色んな時代劇を見て「見る力」を蓄えて欲しい。

作り手側はまだ熱量がありすぎて、誰にでもわかる時代劇を作れないと思う…。
Aria

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