氷雨水葵

フォードvsフェラーリの氷雨水葵のレビュー・感想・評価

フォードvsフェラーリ(2019年製作の映画)
4.0
2023年リライト8本目

ル・マンのスピード感を感じられる作品

◆あらすじ
カーデザイナー、キャロル・シェルビー(マット・デイモン)のもとに、米車企業フォードから、とある依頼が入る。

‘’ル・マン24時間耐久レースで、絶対王者フェラーリに勝てる車を作ってほしい’’

病でレースから離れていたシェルビーは、扱いにくいが優秀なドライバー、ケン・マイルズ(クリスチャン・ベイル)に声をかける―――。

◆感想
月末恒例ポイント消費鑑賞ということで、久しく観ていなかった本作を再鑑賞。題材はフランス、ル・マンで行われる24時間耐久レース。しかも、1966年に伝説となったレースをマット・デイモンとクリスチャン・ベイルを主役に映画化。

今でこそ勝利チームはポルシェやアウディ、国内メーカーでいうとトヨタのイメージがありますが、1960年代当時はスクーデリア・フェラーリが席巻していたんですね。確かに、赤いボディに跳ね馬のロゴはいつ見ても、どこでお目にかかっても勝者の証に見えます。そんなフェラーリを倒すべく動いたのは、なんとアメリカのフォード。個人的にはGMやクライスラーと同様「ザ・アメ車」という雰囲気があまり好きではないのですが、フォード マスタングは好き。
話を戻しまして、本作は打倒フェラーリに燃える熱き男たち、シェルビーとケン・マイルズのお話。まぁ観てもらえればわかりますが、ケンがあの決断をしたのは残念だったな、と思います。スーツ組が望んだとはいえ、ケンほど意志の強いというか、信念を曲げない男なら、一人で堂々とゴールテープを切ってほしかったところ…。確かに、フォードの1、2、3フィニッシュは画になるし、ル・マンを制した唯一のアメリカ車になったわけだけど、レオ・ビーブに出し抜かれた感が否めない。ゴールして笑顔だったケンが、花束渡されなかったり、インタビューされなかったりで、だんだん表情が暗くなっていくのが辛かったです。ただなんとなく、エンツォ・フェラーリと目を合わせていたシーンは、ケンのドライビングセンスが認められた感じがしてほっとしました。

ケンの妻モリーは息子ピーターに「お父さんがそうしたのよ」って言っていたけれど、いや~息子にかっこいい姿を見せてほしかった…。だって、デイトナとセブリングで3冠だったのに!だから余計にケンの最後に納得がいかない。事故死だったとはいえ、優勝していたら何か変わっていたかもしれないのに。。。
そんなケン・マイルズを演じたのは、クリスチャン・ベイル。めっちゃ演技良かったよ!!堅物というか難しい男役を見事に演じており、マット・デイモン演じるシェルビーとの掛け合いも素晴らしかったです。突然始まる男同士の喧嘩(本気ではない)シーン好き。それを、椅子に座りながら眺めてるモリー素敵すぎた。

個人的には、リー・アイアコッカを演じたジョン・バーンサルもよかったです。フォード社長からクライスラー社長へという、なかなか面白い経歴の持ち主ですが、マスタングを世に広めた人なんですね。作中では、シェルビーやケンのこと買っているように見えたのですが、なかないいキャラクターでした。

本作の見どころは、ル・マン24時間耐久レースのスピード感。レースの緊迫感、会場の熱気、ピットインのドキドキ感、24時間という過酷な状況などなど、映画なのに視聴者にすべて伝わってきて手に汗握る瞬間がいくつもあります。エンジン音とブレーキ音が心地いい。
インディ500だと、車1台クラッシュしたらペースメーカーからスタートだけど、ル・マンはないのかな?前の車がクラッシュしても逃げ場のない感じは、観てみて( TДT)ってなりました。夜の闇から突然現れるのも怖いけど、なんの部品飛んでくるかわからないってだけで余計にヒエエエってなりますね。

男たちの友情、家族愛、レースにかける想いと執念、それらが伝わってくる作品です。
氷雨水葵

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