にしやん

ゴーストランドの惨劇のにしやんのレビュー・感想・評価

ゴーストランドの惨劇(2018年製作の映画)
3.7
母親が暴漢をめった刺しにする事件が起きてから16年後、双子の妹ベスが久しぶりに実家に戻ったことから物語が始まる展開で、「マーターズ」で知られるフランスホラー映画界の鬼才パスカル・ロジェが、6年ぶりに手がけた広義のホラー映画。うーん、正確に言うたら表面的には心霊&サイコホラーとトーチャーポルノの掛け合わせというところやろけど、蓋を開けるとベースはクライムサスペンスであり、ヒューマンドラマであるという非常に多面性のある作品。

本作見てまず思たんが、「この監督、また女の子痛めつけてるな」ということや。この監督の出世作「マーターズ」でも二人の女性を徹底的に拷問してたし、今回も双子の姉妹と母親と、この監督は相変わらずやなというこっちゃ。この監督の作品で男がメインで襲われるって無いな。いっつも女性ばっかりや。これってこの監督の趣味嗜好の問題やろ。さらに、今回のメインは成人した女性ではなく、大人と子供の中間の女の子やから余計残虐性を増してた感じやな。ただ、この監督は多分意識的にやってんのやろけど、明らかに女性への性的暴力の描写は殆どあれへんのも特徴や。あくまでも、儀式的というか変態趣向的というか、本作でも女性を人形のように扱っていたぶる暴力描写は見受けられるものの性的な描写はほぼ皆無やったんとちゃうかな。その一方で女性への人格的否定みたいなシーンはそこそこあるから、そういうんが苦手な人は観るん止めといたほうがええと思うわ。わしかて正直胸クソ悪かったわ。

序盤の展開としては、ホラーとしてはあまりに順当すぎる展開で、いわゆる伝統的なホラー。ちょっと古いかな。惨劇シーンにしても特筆すべきシーンはなく、ホラー馴れしてる人には充分耐えられるレベルや。それにしてもこの親子を襲う暴漢二人のキャラクターがあまりにも無茶苦茶。ホラー映画やさかい犯人を変態的にするんは分かるけど、襲った屋敷がたまたま変態の好みの人形屋敷やったというんはちょっと出来すぎとちゃうか?自分等のアジトのドールハウスに誘拐してきたっちゅうんなら分かるけどな。とにかく、この屋敷が変やわ。家じゅうアンティーク人形だらけで、からくり人形まで作っとんで。この親子のおばさん、どんな趣味しとんねん?

中盤の展開については、ネタバレになるから止めとくけど、監督の過去作「マーターズ」「トールマン」同様、ちょっとしたトリックが用意されてる。本作についてで言うと、ネタとしては悪ないねんけど、「まあ、今までもあったわな」ということで、それほどの斬新さは感じられへんかったわ。

この映画やけど、異様な不気味さのアンティーク人形屋敷の舞台設定と、突然の大きな音を出したり、急激な映像の変化で観る人をビックリさせる所謂「ジャンプスケア」のやり過ぎと、底なしに理不尽な凶暴性、見た目の異様さ、ペドファイル的な変態趣味等を併せ持った暴漢二人のキャラによって、必死のパッチでホラーの体裁を取り繕ってはいるものの、わしはこの話、正直根っこは究極の姉妹愛、家族愛を描くヒューマンドラマにしか見えへんかった。過剰な「ジャンプスケア」を差し引けば、ホラーもんとしては殆ど怖ない。あんな暴漢は嫌やけど。別にこの作品を褒めてる訳ちゃうよ。全然ええとは言うてへん。逆説的に言うたら、この映画のベースはヒューマンドラマやということを言い訳というか免罪符にして、若い女性が顔が変形するまで殴られたり、ボコボコにされたり、拷問され、血を流し、恐怖で涙を流すというシーンを撮りたいっていうんがこの監督の絶対的中心やないやろか。「色々言うたかて、お前ほんまはこれやりたいだけちゃうんか?」ってな。そんなことを感じたかな。

今回のこの映画の唯一の褒めどころは「タイトル」やと思う。これは絶対監督がわざとやってる。今回はこのタイトルに騙された。普通この「ゴーストランドの惨劇」というタイトルでイメージしてまうんは「幽霊」やろ。これがミスリードの最大の仕掛けやと思う。これに殆どの人が騙されてまうねん。ここだけはお見事や。

最後に一言だけ。ホラー映画の猟奇殺人犯に銃を使わすんだけは止めてほしいわ。これは絶対にアカン。以上。
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