九月

DUNE/デューン 砂の惑星の九月のレビュー・感想・評価

DUNE/デューン 砂の惑星(2020年製作の映画)
5.0
デヴィッド・リンチ版は観たことがなく、原作も未読、トレーラーからもそこまで伝わってくるものがなくて、観に行く前に評判がくっきり分かれていることを知り、期待と不安半々だったのだけれど、大満足!とても好きな作品だった。とにかく世界観が好きで、IMAXのフルスクリーンで観る没入感がすごかった。あの砂の惑星、アラキスにいるかのような感覚になった。

王族アトレイデス家に生まれた王子ポールの、後継者としての成長譚。最初はどこか子どもっぽい一面を見せていた彼が、全編を通して成長していく。自分は何者なのか、偉大な父の跡を継ぐことができるのか、また、継がなければならないのか。両親がそれぞれ残してくれたものや与えてくれたものを自分のものにできるのか…そんな葛藤がティモシー・シャラメによって見事に表現されていて、引き込まれた。最後まで見終えて、そこには確かに成長した彼の姿が。

個人的にとても好きなのが、ポールとレト親子。演じたティモシー・シャラメとオスカー・アイザックがどこか似ているというか、本当の親子のように見えることがあって、あのふたりの関係性も良かった。
今までこのふたりが似ているなんて一切思ったことはなかったけれど、息子のポールと父親のレトが交互に映されるシーンで、目元なのか顔のつくりなのか、なんとなく似ているな…?と思った。
この親子のキャスティング含め、他のキャラクターたちもぴったりだったように思う。

今作は序章に過ぎず、冗長で退屈に感じる人も多いというのも分かるが、原作のことを「自分にとってすごく大切な存在の本」だと言うドゥニ・ヴィルヌーヴ監督が、小説の中の"砂の惑星"を限りなく忠実にスクリーンに映し出したもので、どこか詩的で美しく、原作への敬意がとてもよく伝わってきた。(デヴィッド・リンチ版には原作の精神が全く感じられなかったらしい…)
その世界観にもっと浸っていたくて、原作も読んでみたくなった。

実際に砂漠で撮影された映像と、特殊効果や視覚効果を駆使して作られた映像が違和感なく融合し、そこにハンス・ジマーの重厚な音楽が響く。異世界を覗き見、砂丘での営みを体験しているような感覚になるなど、本当に贅沢な時間を過ごした。
時折出てくる、この砂の広がる世界では水分が何よりも大事、という描写が現実感と説得力があってゾクゾクした。

頼もしい家族や仲間たちがポールにはたくさんいるものの、命を落とす者も少なからずいて、でも彼らの死の迎え方というか、最期に一矢報いる姿勢や死に様に感銘を受けた。

今年、MCUを一気に観たり、とっつきにくいかと思っていた『市民ケーン』を観たあとに観た『Mank』が好みだったり、
映画って何もひとつの作品だけを観て100パーセント楽しむものばかりではないのだな、としみじみ思っていた私は、この作品でもそのことを改めて実感した。

物語の雰囲気を壊さないようにしつつ丁寧に説明がされているものの、不明点も多々あり。でも、ハルコンネン家の領主は何故ひとりだけ空中移動なのか?や、
下唇に黒い印(海苔みたいな)がついた人は敵にも味方にもいたけれど、あれは何なのか?など細かい疑問や、用語についてはパンフレットで解説がされていたので納得できた。
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