一人っ子政策という社会制度に翻弄される家族の物語。
一人息子を事故で亡くした夫婦を中心に、80年代から現代にかけての中国における様々な瑕疵をまざまざと見せつけられます。
国営企業で働く仲間たち。
政策遂行のために不要な妊娠に目を光らせる立場の友人。
ひっそりと生きているのに重なっていく不幸。
時系列が不連続に飛び、過去や現在が行ったり来たりで物語を把握するのに最初は少々わかりにくいのですが、そうすることで徐々にわかる過去の詳細や夫婦の心の傷。
固定カメラがじんわり動く長回しが多く、作品の静かな雰囲気を引き立てていました。
辛い過去を乗り越えるというよりも、逃げるようにして故郷を去る夫婦。
「俺と妻はお互いのために生きているんだ」
そう思っているはずなのに、実際に誠実かどうかは別問題なのも悲しくリアリティがありました。
この社会で生き抜くことは、とても残酷。
食事の時に出てくる大きなホカホカのマントウが美味しそうで、何気ない日常の一コマだけがこの上ない幸せの風景で涙が出ました。