またたび

在りし日の歌のまたたびのレビュー・感想・評価

在りし日の歌(2019年製作の映画)
4.0
長い!3時間はさすがに長い!!
確かに話の内容は、文革後から現在までの約40年を中国の地方都市に住む2組の夫婦の物語だから仕方がないが、時系列が前後するのでいつの時代のエピソードなのか追うのは結構大変かも。
しかし、国家の政策、時代に翻弄されながらも家族の一人一人が様々な思いを抱えながら忍耐強く、希望もって生き抜く力強さと乗り越えてきた時代の思い出と友情をそれぞれに心に秘めながら、最後にその重荷をおろすまでを描き切る監督の祈りにも近い思いは十分に伝わり、これ以上短く出来なかった結果の3時間だと理解した。

私は主人公の子供らの世代より少し上くらいかな。だから、私の親の少し下の世代の話だろう。1970年代の服装が懐かしい。私が子供頃の中国人のイメージはみんな人民服を着ていた。今の若い人にはこの話が昔の話のように思うのだろうな。
今や中国でもやめたひとりっ子政策が、この作品の2組の夫婦の運命に大きな影響を与えたことは間違いないが、時代や国といった自分らではどうしようも無いものに人生が翻弄されることがあるのは、どこの国でもいつの時代でもあることであり、生きていくということは、そういう事なのだと思う。徳川家康が人生とは重荷を負うて遠き道を行くが如しと言ったというが、この作品は、人間にとって普遍的な事を描いた文学的大作と思う。

ここ最近、家族を描いた映画が多いが、これは中国映画らしいスケールの大きさと懐の広さで描き切っている。
韓国映画とも日本映画とも違う。だから映画は面白い。

主演の夫婦役の俳優が、ベルリン国際映画祭の銀熊賞を最優秀男優賞と女優賞ダブルでとっているが納得!
二人ともめちゃくちゃ上手い!なんでこんなに上手いんだってくらい上手い!!また、主演だけでなく、脇役の役者みんな上手い!これが中国の凄さか。
また、日本でいうところの蛍の光の歌が2組の夫婦の友情を歌っているかのようで感動的。いい曲だと思うが(最近では卒業式でも歌われず、今や紅白歌合戦でしか歌わないのか⁈)中国の歌詞がすごく素敵だったし、中国語って本当に音として美しい言語だと思った。
3時間は長いが見る価値は十分にある。
特に私のように親を看取る世代と親の世代の人に見て欲しい。若い人にはまだちょっと早いかな。
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