このレビューはネタバレを含みます
ホロドモール。
その言葉を私は授業で習ったのだろうか?
そもそも地理・世界史・日本史とまったく興味が湧かず、高校の授業などまったく思い出せない。
高校の世界史で覚えている単語はアッシリアとヒッタイト、十字軍の遠征。これだけ。
私が知らない間にホロドモールの話はあったのだろうか? ホロコーストも大人になってから認識した言葉である (ヒトラーのユダヤ人迫害は端的に知ってた)。
ホロドモールに関してはロシアのウクライナ侵攻を受けて初めて知った史実だが、とんでもない話である。
こんな話を知らないでいていいものか。
「戦争」などの武力行使以外にこんなに大量虐殺する方法があるとは。
こんなことを実行できる悪魔の独裁者が 2 人いたとは。
そして、現在ウクライナで起こっていることとよく似ているではないか。
このロシア侵攻でウクライナ人がみな結束して祖国を守る理由がわかる。
「祖国」というよりは、「自分たちの大事なもの」かもしれない。
人食に関しては、つい最近『夜と霧』を読んでいたのでそこでも起こっていたことを知った。
しかしホロドモールの人食は本当に本当にやるせない気持ちになる。
これは「ホロドモールの映画」よいうよりは、「ガレス・ジョーンズ」の物語だったから (原題が 'Mr. Jones' だし)、親が子供を〇して〇べたという話もなく、(あれでも) かなりライトな部分だったのではなかろうか。
wiki を見ていると言葉を失う。
ヒトラーは「ナチス」という組織が直接大規模に手を下していたが、このホロドモールの被害者は、ただ「被害者でいる」ことすら許されないのだ。
人間、いや生きとし生けるものほとんどにおいて「本能」とも言える「食べる」ことが不可能になるのだ。
生命は簡単に死なないようにプログラムされている。良心がどんなに抗おうとしても、理性がどこまでその「プログラム」に打ち勝つことができるのか。
「他人の命を取ってまで」生きようとする本能が、より当事者たちを苦しめたのだろう。
自分の子供に手をかける、というのは本当にもう「よっぽど」の状況だろう。飢えていなければ誰だってそんなことをしたくはないのだ。
死ぬほど飢えていたとしても、そんなことはしたくなかったはずなのだ。
ホロドモールがどのように収束したのかまだ調べられていないが、ロシアによるプロパガンダ、圧力、略奪。
まさに今、2022 年になっても目の前で起こっているのだ。
幸い、100 年前と違って今は「何が起こっているのか」をある程度の確度で知ることができる。
そこで自分にできること、「傍観者」にはならないこと (いじめを容認するクラスメイトのようなポジション)、よくよく考えた方がいいと思う映画だった。
また、この映画を観て危機感を持った。ロシアが今おこなっているようなエグいことは、実は日本もやってきたのである。
「満州事変」は日本の偽旗作戦だ。
ガレス・ジョーンズの次の取材地は、日本だったのだ。
ここで日本軍に捕まり、引き渡されて殺されたらしい。
日本人は、かつて日本軍 (関東軍?) がしてきたことを教育の場でも教えられない。ドイツのヒトラーに関する教育とは大違いである。
「隠蔽」とまでは言わないが、「黙っている」のである。
まさか日本が侵略するなんて、まさか日本が偽旗作戦するなんて。
そう思う人が多いのではなかろうか。
過去に起こったことをちゃんと認識して「2 度とくりかえさないように」教えることはなく、相変わらず「日本って海外でも認められてる!」などという情報を TV やネットを問わず目にする。
これってすごく危険な状態じゃないだろうか?
ロシア国民は本当のことを知らされていない。だから国を擁護する人が大多数だ。まさか自国がそんなことするわけない。
それは日本人にも言えることなのではないだろうか。
起こってしまったことをなかったことにはできない。そして侵略をしたのは私たちではない。
それでも。
過去に自分たちの国の誤った思想を持った人間が暴走し、一般市民を殺害して侵略したことをきちんと認識し、それを恥じ、「申し訳ない」と思うことは必要ではないだろうか。
(申し訳ない、というと語弊がある。I'm sorry という気持ちが一番近い)
「日本はそんなことしてない」と思うのは大間違いである。
誤った考え、方向にいかないように、今、勇気を持って知るべきことがあると思う。
全然関係ないけど「カシュニーさん」って言ってるの見て (知床の沈没で有名になった) 「カシュニの滝」と関係あるのか、ロシア語なのかと思ってビックリしました。