つちのこ

パピチャ 未来へのランウェイのつちのこのネタバレレビュー・内容・結末

3.7

このレビューはネタバレを含みます

「拾屋に基づく話」 とあったので、どこまで実話なのだろう…… と思っていたが、ファッションが題材であるところからフィクションらしい。

したがって、映画ではファッションショーをおこなうことによって殺戮が発生したわけだけれども、フィクションとのこと。
これは事実だとしたらつらすぎるので、実話じゃなくてよかった。


アルジェリア。
無知な私はナイジェリアとの区別がつかないし、イスラム圏だということも、フランスの植民地だったということも知らなかった。

「アルジェリア映画とは珍しい」 と思って観た次第である。
案の定、いままでは露ほども知らなかったことも、映画を観て監督のインタビューを読んで少しだけ知ることができた。


サミラはよく髪を隠していたが、やはり髪を露わにして普通のワンピースなどを着ている方が美しく見えた。

主人公ネジュマがナンパされたり襲われそうになるのも、なるほど魅力的で理解できる気がした。


少し話が変るのだが、痴漢した方が 「あんなにスカート短いんだから触って欲しいんだと思った!」 みたいな謎の言い訳をするようなマンガを読んだことがあるような気がする。

実際にこんなことを痴漢加害者が言うのかは知らないが、もし 「女性は髪と肌を隠すのが当然 」 という環境で、その髪や肌を露わ (と言っても私たちイスラム圏外の人間からすると 「裸」 とは程遠い露出) にしていたら、「襲ってもいいのではないか」 という思考回路になる人間もいるのかもしれない。


もちろん、男性が自分の情欲? 欲情を抑えきれないから女性がガマンをしてひたすら隠し続ける…… という世界はまっぴらだが、確かに髪と肌を隠すことは自衛にもなっているのだとは思った。


サミラが最初から髪を隠さずに出てくるシーンが多くなかったのなら、そこまで 「やはり美しいな」 と思うことはなかったかもしれない。
隠されている姿と、顕になった姿が比較できたので、髪や肌に美しさをプラスする要素が大いにあるのだと知った。

まだまだ女性であるだけで行きにくい世の中だとは思うが、いつの時代にも自由のために闘う女性はいるのだなぁと思う。


ただ、ワシラに対して言った言葉はひどい。
ワシラが 「ひどいこと言ってごめん」 と謝っていたが、いやいや主人公の方がよっぽどひどかったから……。

友達がみんないい人でよかった。
女性が虐げられている環境では特に、女性が女性に対して優しい気がする。

そりゃーこんなにいい友達がいたら、故郷から離れたくないよねー。


ひとつ、良い言葉だと思ったのが、

「分かり合おうとしないのなら話をするな」

主人公の元彼 (結構いい人っぽかった。男尊女卑感はあったけれど、多分かなりマシな方の人だったのではないか) のセリフだ。

男の人でも 「いつか殺される」 と思っていた時代だったのだなぁと。


日本でノホホンと暮らすのもいいが、やはりたまには世界のことにも目を向けて自分と違う考えを知ることは大事だと思う。