たつなみ

屋根裏の殺人鬼フリッツ・ホンカのたつなみのレビュー・感想・評価

4.0
ひたすら薄汚くて、観ているだけで映像から異臭が漂ってくる程の胸糞悪さ。
でも何故かホンカという男の無様さに哀愁を感じてしまった。

彼がやっている事はひたすらアナーキーで無茶苦茶だが、彼は純粋に理想の女をモノにすることだけを追い求めている。
でも非情にも現実は彼を打ちのめす。
辛い現実から目を背けようとして彼はひたすらに酒に逃げ、誰からも相手にされない様な老婆の娼婦に声をかける…。

だが相手を性欲処理の”道具”として扱ってもただただ虚しいだけ。
ホンカはそんな現実を無かったことにしようと、現実をリセットする様に殺人を繰り返す。

世の中と折り合いを付けられない人はどの時代にも居る。
彼だってもう少し上手くやれれば幸せになれたかもしれない。
一体彼はいつから間違えてしまったのだろう?
彼の行動は絶対に許されるものでは無いが、何故だか彼に不思議な共感を覚えてしまう。
理想の女に手が届きそうなのに上手く行かないホンカがひたすら可哀想過ぎる。
掃除係のヘルダのくだりでは『頼むからその気も無いのに彼に優しくしないでくれ!』とすら思った。

エンドロールでフリッツ・ホンカ本人の写真や、彼の部屋の写真が流れるが、余りの再現度の高さに驚いた。